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英雄王の再来
第2騎 転生
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「はっはっは!エル様の初陣とは、ワシも歳を取るはずですな!」
大きく口を開けて、笑う。・・・ヴァデンス、その言葉は10回目だ。それに合わせて、父上も大きく口を開けて、笑う。部屋に、初老と言える年齢の人達の、大きな笑い声が響く。それは、部屋の壁に反射して木霊する。まるで、何人もが笑っているかのように騒がしい。しばらく、その騒がしい笑い声を聞いていると、扉が開かれる音がした。

「父上・・・何を笑っておられるのですか。」
嘆息混じりの、不快な気持ちを隠そうともしない声だ。その声の主は、今部屋に入ってきた人物・・・次兄 ヒュセル・シュトラディールだ。痩せこけた、そんな印象の体型、顔付きをしている。顔は整っているが、その印象が冷たい、きつい感じを相手に与える。それらを隠すかのように、非常に派手な服装で、常に高価な宝石を身に着けている。今年で、21歳。内政などの細々とした事を嫌い、派手な軍事を得意としている(本人談)。

「馬鹿みたいに、笑いこけて・・・。」

「おぉ、ヒュセル!来てくれたか・・そう言うな、年寄りの楽しみは、若いうちには分からんもんだ。」
父上は、ヒュセル兄様の言葉に、何も感じていないらしい。・・むしろ、好意的だ。ヒュセル兄様の顔には、“面白くない”と書いてある。口を尖らせて、話始めた。

「それで、父上、何用なのですか?私は、戦の準備で忙しいのですが。」

「いや、今度のシェルコット卿を迎え撃つ話じゃが・・・」

「何か問題が?」
父上の話の途中で、ヒュセル兄様が割り込む。この人の悪い癖の一つである。無駄に、結論を先走るし、相手の言葉を最後まで聞こうとしない。

「うむ、特に問題ではないのだが、そちが“総大将”を務める訳じゃが・・」

「だから、何なのですか?」
また、割り込む。

「・・・陣の一端に、エルを加えて欲しいのじゃ。」
父上が、やっと結論を言えた。それを聞いたヒュセル兄様の顔が、見る見るうちに真っ赤になった。怒ったり、興奮すると、顔が林檎のように赤くなる。もう一つの悪い癖だ。

「な、何故ですか!?こんな、初陣もまだ済んでいない、ひよっこを!」
動揺を隠しきれず、恫喝のような声を上げる。ひよっこで悪かったな・・。

「まぁ、待て待て。そちにも初陣があったであろう?今回は、それがエルの番なのだ。」
泣き喚く子供を、あやすように、優しく問いかける。

「し、しかし!」

「・・そちにしか頼めんのだ。ヒュセルになら、初陣のエルを預けても安心できる。」
そう言われて、ヒュセル兄様は“泣き喚く子供”から“褒められて自慢気な子供”へと変わる。

「う・・・そ、そこまで仰るなら、仕方ありませんね。」

「おぉ、そうか!やってくれるか。では、頼んだぞ、ヒュセル。」

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