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英雄王の再来
第2騎 転生
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。私は、その石で出来た廊下を進んでゆく。しばらく、進むと大きな扉が見えてきた。扉の前にいた守衛に、陛下に呼ばれた旨を伝える。少しの間の後、扉が開き、中に案内される。そこは、少し広めの部屋に、玉座が佇んでいる“謁見の間”。私を呼んだ張本人は、その玉座に座り、大声でヴァデンスと笑い合っていた。・・・能天気な人だな、本当に。

「おぉ、来たか!こちらへ、エル!」
こちらに気付いたようだ。大きな手を振り、こちらへ来いと合図をしている。私は、そちらに向かい、膝をついた。

「陛下、御呼びでしょうか?」
あえて、畏まった挨拶をする。

「あぁ、いやいや。そんなに畏まるな。親子ではないか。」
父上は、そう言う。しかし、どこの国でも親子と言えど、国王とその他は区別されるものなんだが。しかし、この人はそれを好まない。人が良いというか・・甘いというか。その人が・・アトゥス王国第21代国王 ジンセルス・シュトラディール。御年55歳。今年で、在位20年目。アトゥスでは、長い方だ。大きな腹が目立つ、ふくよかな体型をしている。人の良さそう顔で、善人の塊みたいな人だ。それ故に、親としては良い父親であるが、王としては足らぬモノがある。私は、父上の希望通りに、立ち上がって、努めて親子として接する。

「それで・・・ご用件をお伺いしても?父上。」
優しく、微笑む。

「おぉ、そうだそうだ。そちの初陣についてでの。どうも、シェルコット卿がまた、アンデル地方にちょっかいを出そうとしているらしい。恐らく、前回と同じく、戦闘は規模の小さなものになる。そこで、そちの初陣にしようと思うのじゃが。」
大きな腹を、これまた太く、大きな手でさすっている。叩けば、太鼓のように音を立てるに違いない。シェルコット卿と言うのは、アカイア王国の属州、ミルディス州の総督だ。ここ最近、アトゥスのアンデル地方に、小規模の出兵を繰り返している。私はそのやり方に、少し訝しさを感じてはいる。何か、大きなものの前触れのような・・・。それはさて置き、またこの話だったな。私の初陣の話は、これで10回目を数えた。どうも父上は、私の初陣は、小規模の戦闘に参加させたいらしい。不安な気持ちは分かる・・・遅くに出来た子供だし、兄達よりも優秀なつもりだ。しかし、こうも初陣の話が出ては、「やっぱり、ダメだ!」と取り止めにされるのは、正直、うんざりしていた。家臣達も同じだろう。そもそも、私にとって“初陣”は、225年前に済ましている。・・・まぁ、父上の知るところではないが。

「私は、いつでも大丈夫ですよ。」
にこやかに、誠実そうに答える。これでも、“父を慕う良い子供”を演じて来たつもりだ。その身体に見合う精神を演じなければ、訝しく思われるだろう。・・・恐らく、“変な子”だと。そう思われては、後々面倒になる事は、必須だ
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