第2騎 転生
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ナヴィー・・。」
私も、笑った。
―そんな、夢を見た。そんな、幸せの夢を。
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アトゥス王国暦358年4月16日 昼
アイナェル教会 本教会“アイナェル神殿” 祈りの間
王子 エル・シュトラディール
「エル王子、ここに御出ででしたか。」
老人の、しゃがれた声がした。私は、振り向く事もなく、その声に答える。
「ヴァデンス、どうかしたのか?」
私に声を掛けたのは、ヴァデンス・ガルフ大元帥だ。齢58になるというのに、戦場の第一線で、活躍し続ける“化け物”だ。現場の最高指揮官である“大元帥”に叙されて、30年になる。その間、ずっとアトゥス軍を率いてきた。
「陛下が御呼びですぞ。・・恐らく、初陣の事ではありませんかな。」
「また、それか・・・。」
私は、つい、ため息を付いてしまう。
「陛下は、ご心配なのですよ。エル様は、幼い頃から優秀でしたからな。優秀な御子を、戦場に出すことを不安に思っておられるのでしょう。」
ヴァデンスは、何処となく、誇らしげな声をしていた。
「はぁ、分かった。陛下には、すぐにお伺いします、と伝えてくれ。」
「分かりました。それでは・・」
そう言って、気配が“祈りの間”から出て行った。私は、それを確認してから、目の前にある大きな像に再び目を向ける。それは、女性を象った大きな像。癖のある長い髪に、整った顔とすらっとした肢体を持つ女性。右手には“王剣”を、左手には“決意の書”を持つ―この女性は、アトゥス王国初代国王 アイナ・エルカデュール。女性であるが、“女王”とは呼ばない。理由は、詳しく分かってはいないが、本人がその“呼称”を嫌ったと言われている。“女神の化身”と呼ばれ、英知、光明、能弁、様々な力と才を持って、争いの時代を生き抜き、人々を導いた。それ故に、彼女の死後、彼女を神格化し、アイナェル神として祭った。それは、第2代国王である彼女の夫、ネストイル・シュトラディールの時代には、国教とされ、人々に広く信仰されていた。私の時代でも、広く信仰されていたし、今の時代でも、信仰は続いている。一つ、彼女の逸話で、“その姿、天女を勝る美しさを持つるが、口は災いの如し苛烈さを持つ”と言うものがある。全てにおいて、卓越していた彼女だが、口だけは悪かったらしい。
「さ、行こうか。父上が待っている。」
そう呟いて、アイナェル神の像に背を向けて歩き出した。祈りの間を出ると、眩い光が差し込んでいる廊下に出る。ここは、“アイナェル神殿”と呼ばれる石で造られた建物だ。アイナェル教の本教会が置かれている
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