9:皮肉
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俺達全員が今までの事柄を理解・整理し、落ち着きを取り戻すのには結構な時間を要した。
「うふふ、予想通りのリアクションだったわね」
マーブルのその言葉に、ユミルは再び不機嫌そうに鼻を鳴らす。
因みに、奪われたフードは持ち主の手に戻され、今は膝の上に乗せられている。再び顔を隠して逃げ出そうとはしないものの、向き合うのも嫌そうなその目はさっきからこちらを頑なに見ようとせず、視点は左下に意地でもと固定されている。
「それにしても、まさかこの子があの死神の容疑者になるなんてね……」
マーブルは溜息と共に純粋に憐れむように表情を曇らせ、むくれ続ける少女の横顔に視線を注いでいる。
少し前、マーブルは目を丸くして驚いている俺達を奥のログソファに案内し、テーブルを挟んだ反対側の丸太のイスに自分とユミルを座らせている。そして、いち早く落ち着きを取り戻していたシリカが、マーブルに俺達とユミルとの経緯を、俺達の紹介を兼ねて説明していたのだ。それに耳を傾けるマーブルは、俺達の名にさして驚きもせずに最後まで黙って話を聞いていた。
聞けば彼女もエギル達と同じ商人の一人なので情報には詳しいらしく、俺達の二つ名も含めて既に知っていたらしい。更には、死神事件や大鎌の条件についてまでも知っていた……との事だ。
「たしかに言われてみれば、この子は条件を満たしているのかも知れないけれど……」
「……ボクは別に疑われようが、どうでもいい」
自分を『ボク』と呼ぶその少女は、声色まで不機嫌にさせている。せっかくの可愛らしい鈴の音が台無しだ。
「ダメよそんなの。ちゃんと取り調べに応じたほうが、きっとキリト君達も安心すると思うの」
「それこそどうでもいい」
そっぽを向く角度を更に強める。それにマーブルは小さく嘆息した。
「この子は、もう……。ごめんなさい。私が代わりに謝るわ」
「いえ、それは全然構わないんですけど……それにしても……」
そう切り出すアスナを始め、俺達は表面上こそ落ち着きを取り戻したものの、まだ胸の内には驚きの念が残っている。
「まさか、ユミルちゃんの正体が、こんな子供だったなんて……」
アスナの言葉に、リズベットも同様の面持ちでふるふると頷く。
「あたしも意外だった……。キリト、あんたは、その……正体がこういう子だったって予想できてたの?」
その言葉に俺はいやいやと手を振る。
「いや、俺も今度ばかりは本当に驚いた。正直、真逆の人物像を想像してたよ……小柄だけど強面の中年男性とか、筋骨隆々なドワーフっぽいおじさんとか、さ……」
「だよね……」
俺達は揃って苦笑混じりの困惑した視線を交換し合い、やがてそれは最終的にユミル
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