9:皮肉
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取りを拒否し続けたら、目に涙を浮かべて、お願いだから受け取って欲しいって懇願されたっけ……」
マーブルの声は徐々に、哀しみの湿り気を帯びていた。
「皮肉ね……私は、お金なんか一銭も要らなかった。ただ、あの子の泣き顔は見たくなかったから、喜んで欲しかったから武器を打ったのに……あの子は、私に涙を浮かべてた。笑顔を見せてくれたことなんかも、一度も無くて……。あの子は、今でも私の事を信じてくれない。だからかしらね……最近、私があの子にしたことは果たして本当に正しかったのか、ふと疑問に思う時があるわ……」
「――そんなことありませんっ!!」
「シリカちゃん……?」
目尻に雫を溜めたシリカは、顔を上げて叫んでいた。
「マーブルさんがユミルちゃんにしてあげた事は、絶対に間違いなんかじゃありません! だって、ユミルちゃんはこの子をっ……」
彼女の胸の中で体を丸め、眠り続ける小さな竜――ピナを軽く抱きしめる。
「ピナの為に、その武器を取ってくれました! その時あたしに『その子は、大丈夫?』って心配してくれました……! だから、マーブルさんは、そんな優しい人にしてあげた事をっ、誇っていいと思うからっ……あ、あたしはっ……!」
「……ああ。もう充分伝わったよ、シリカ」
俺は、次第に肩を揺らしてしゃくりを堪え始めたシリカの頭を撫でる。
「そうか……あの時、あいつは、そう呟いてたのか……」
ユミルが出会って初めて口を開いた、シリカへと小さく呟いた一言。それはピナを想う一言だった。
だからあの時、ユミルは叫んだシリカの叫びに戸惑い、伸ばした手を迷わせつつ引っ込めたのか……。
思えばシリカは、ユミルの正体が知れた時もあまり驚いた様子は見せなかった。あの呟きを聞いた時からシリカは、ユミルの正体に気付きかけていたのだろう。
「シリカちゃん……ありがとね」
マーブルもどこか目が潤んでいるような気がするが、細い目のせいでよく分からなかった。
場が少々しんみりとしつつも、どこか居心地の良い空気となる。
……だったのだが。
マーブルが目を指先で軽く拭った後……
「――だけど。私はここで一つ、あなた達に伝えておかないといけない」
そこには先程と打って変わって、真摯な、大人の顔をしたマーブルが鎮座していた。
「あなた達が、私もユミルも優しいのだと言ってくれた事は本当に、心の底から嬉しいわ。でも……酷な様だけれど、あなた達は私への印象を改めて貰わないといけないわ。……あなた達は、私に疑惑の目を向けなくてはならない」
「…………え……?」
その一言に、俺を始めとした全員が唖然とする。
「どういう、意味ですか……?」
ア
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