9:皮肉
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は低くした声を震わせ、犬歯を見せ付けんばかりに歯を食いしばっていた。
「キミ達はボクの事を何も分かってない。分からなくていい。だから……この申請は、受けられない」
言い終わると同時に、ログ表示限界時間の三十秒が過ぎ、音も無く消えた。
それを見届けたユミルは、俺達が親の仇敵とばかりに睨む。
「もし、ボクが素顔を見せないままでも、キミ達はボクにそんな事を言えたのっ……? 見せてなかったら、きっと今でもボクの事を警戒して不気味がってたに決まってる! キミ達はボクの正体がこんな外見だったから、同情して情けをかけたんでしょ!? ボクはそんなのいらない! ……そんな上辺だけの薄っぺらい感情で、ボクにそんな言葉を投げ掛けないで!!」
クシャリという乾いた音が聞こえたと思ったら、彼女の手元にあるボロのフードが、今にも引き千切れそうなほど握り締められていた。
「――……ユミル、あなたはまだ……」
マーブルが言い終わらない内に、ユミルは席を立った。
「マーブル、この人達はボクを死神だと疑ってる。お店の空気を悪くしたくないし、ボクは部屋に戻ってるから」
「ちょっと待ちなさい、話はまだ――」
「ボクはただのお客だから、この人達に出て行けとは言わない。それに、お昼にはまたちゃんと降りてくるから。それで文句無いでしょ」
ユミルはその言葉を最後に、それじゃ、とだけ言い残して、半ば逃げるように階段を上っていった。
すぐに頭上から部屋の扉が開閉する音が届き、やがて微かなノイズを含んだBGMだけが木の空間を漂うだけとなる。
「…………あんな具合で、すごくひねくれた子なんだけど……めげずに仲良くしてくれると、私としては嬉しいわ」
マーブルが溜息混じりに言う。その言葉と表情は苦笑いの形ではあったが、なんとも言いがたい哀愁のニュアンスが感じられる。
だが、それにアスナが真面目な顔と共にしっかりとした声色で告げた。
「もちろんです。ユミルちゃんが容疑者である事と、わたし達がユミルちゃんと友達になりたいという気持ちは全く別ですから。それに、同情なんて理由で力になろうとした気なんて微塵も無いですし、上辺だけの軽い気持ちで友達になろうという気も決してありません。確かに知り合って間もないですけど……さっきのユミルちゃんの、あんな言葉と表情を見せられては、見過ごせるはずがありません。絶対にわたし達が、ユミルちゃんの友達になってみせます」
「アスナちゃん……あなた達……」
それにリズベットとシリカも同時に頷いている。
「……あの子の為に、どうもありがとう」
マーブルは深く頭を下げた。今更ではあるが、彼女のまるで母親のような寛大さに、俺は深く感嘆する。
そして再び頭を上げ
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