9:皮肉
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本人へと収束した。
「……ああもう、だから嫌なんだよ。フードを取るのは」
ユミルはそんな俺達を一度睨み、溜息と共に再びそっぽを向く。
「この世界じゃ、ひとたび顔を見せれば揃って周りはボクをそんな目で見る。居心地の悪い、興味と奇異の注目の視線……。最悪、言い寄ってくる輩が殺到してくる時もあった。他にも色々……もう、嫌になる」
「あー、わたし、ソレよく分かるなぁ……」
「あたしもです……」
「女の子なら誰だってそうよ。あたしだって一時期はそれにかなり悩んだなぁ……」
こちらの女性陣が、一斉に同情の言葉を投げ掛けていた。
「この世界は女の子が少なすぎるよ。だから男の人が現実の時以上に寄ってくるし、同性の友達も出来にくいから寂しい思いもする」
「はい……。同じ女の人が居るからって、必ずしも仲良くなれる訳じゃないですし……喧嘩したり、対立したりもします」
シリカはかつて、俺とパーティを組んだ時に出会ったロザリアとの一件がある。その為か、心なしか言葉に重みがあった。
「やっぱこんな世界じゃ、女の人って……すげー大変なんだな」
俺がしみじみと言うと、隣に座るリズベットが苦笑しながら俺の二の腕を肘で軽く小突いた。
「あんたが思ってる以上にね。……でも、もう大丈夫だよ。ユミルちゃん」
リズベットは表情を明るく努め直して、ウィンドウを出して操作したかと思うと、ユミルの前に一文のフレンド申請ログが出現した。
「もう嫌な思いはしないように、あたし達が力になってあげる。良かったらさ、フレンド登録しない?」
おお……と俺は内心、リズベットの懐の深さに改めて感心していた。
彼女はこのように、先だって女の子を守ろうとする保護者めいたところがある。ゆえにきっとアスナやシリカといった人達とも交流が深く、また慕われているのだろう。俺達と歳はそう変わらない筈だが、マーブルとはまた違った、年上の貫禄というものがある。
だが、それに対しユミルは、その短いログを僅かに目を見開いて暫く眺めていたものの、
「……別にいい」
と、プイと再び視点を左下へと向けた。
リズベットは少し残念そうに眉を下げるも、アスナが続く。
「ユミルちゃん、怪訝に思わなくても大丈夫だよ。今はあなたは事件の容疑者だけれど、わたし達はちっとも気にしたりしない」
「…………っ」
それを聞いた途端、ユミルの表情が一変した。
「……気にしたり、しないだって……? ――ふざけないで……!」
心の内の怒りの激情が、わずかに顔に滲み出たかのような表情だった。
「……最初はボクをあんなに怪しんでおいて……どうして、そんなことが言えるのっ……!」
ユミル
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