0章
地下牢
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マテューは泥の中から小石を拾い上げて円形の壁に力なく投げつけた。
小石のぶつかる音が幾たびにも反響し、そのあと小石が着水する音が聞こえる。
水面波が壁まで到達する。
「くそっ。危険だってことはわかってたけど火あぶりなんて聞いてないぜ……」
「だから何とか脱出しよう」
ヨハンが狭い中をぐるぐる歩き回りながら言った。
「脱出ったって綱がなきゃ揚げ戸まで上ることもできないんだぞ」
地下牢は1階の床が揚げ戸になっており、そこから綱で地下まで降りるため綱を回収されてしまうと囚人は逃げることができないのだ。
「なあオッチャン、なんかいい方法はないのかよ」
ジェファーソンは、しばらく顎に手をあててから答えた。
「無理だな。民衆が助けてくれるのを祈るほかない」
「それより私はオッチャンではない! まだ32だ!」
マテューはそれを無視して言った。
「ここからタイムマシンで一回帰ってまた戻ってこようぜ。お宝はあきらめるしかない」
「ここが地下だっていうことを忘れるな。いまタイムマシンを使ったら全員生き埋めだよ」
マテューは深いため息をつく。死ぬことを覚悟している風ではないが少なくとも逃げられないことを理解したという合図だろう。
その時1階から木の折れる大きな音が聞こえた。
数分後、扉があいて綱が下される。
「あぁ。ついに処刑か……なんなら母さんに電話してから来ればよかったな」
「いや、様子がおかしい」
マテューの言葉を遮って伯爵が言った。
「はやく上るんだ!」
ガラガラ声が裏返って新種の生物みたいな声が耳に響く。
「助けが来たらしいぞ。はやく上りなさい。ここも略奪が終われば火をつけられる可能性がある。」
絶食させられた鷹みたいな勢いで3人は登っていく。
1階につくと見事に蹴破られた木製のドアが元あったところから2mほどのところに倒れており、その下には鈍器で殴られて気絶したらしい獄卒がいた。
「伯爵どの。こいつらはなんです? 見かけない風貌ですな」
2mはあろうかというスキンヘッドの大男が尋ねた。
「大丈夫。彼らは私の友人だ。それより私は一刻も早く脱出して憲法制定国民議会に戻らなければ。ここからが正念場なんだ」
「わかっております。部下が護衛をしますのでお気をつけて! おい、お前ら伯爵殿を議会までお送りしろ!」
男は後ろに立った男に比べれば小さい2人の若者に指示する。
「仲間を集めながら脱出します! 鉛玉が飛び交っていますので流れ弾に注意してください!」
痩せたほうの若者がそう叫びながら梯子に向かう。
地下牢がある牢屋は敵が入りずらいように梯子を上らないと扉に到達でき
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