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人狼と雷狼竜
ひとつの答え
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フの言葉に周囲から驚きの声が上がるが、村長は黙ってヴォルフを見据えていた。
「やはり、あの子なんですね……」
「何?」
 村長の呟きは余りにも小さく、ヴォルフにも聞き取れなかった。
「理由をお聞きしましょう」
 村長の言葉に、騒ぎになりかけていた周囲がしんと静まる。
「前回も今回も、ジンオウガは俺と切り結びこそしたが、すぐ側にいた他の者達を襲わなかった。それどころか、ナルガクルガから俺達を逃がした」
「ナルガクルガから?」
 流石の村長もこの事実には驚きが隠せなかったらしく糸目を見開いた。
「ちょっと待てよ!」
 怒声と共にタクが立ち上がった。
「ジンオウガが霊峰から降りてきたせいでな、もっと奥にしか居なかったヤバイのが縄張りを出てやがるんだ。ジャギィ共の群だけじゃねえ! ナルカクルガを見ただろ!?」
「ああ」
「ジンオウガが出てこなけりゃ、アイツ等もゾロゾロと出て来ることも無かったんだ。……アイツを何とかしねえとな、この村が干上がんのも時間の問題なんだよ!」
 ヴォルフにはタクの言い分は理解できた。
「だが奴の強さは見ての通り。一応言っておくが、奴を相手に数を束ねても無駄だ」
「は? 意味分かんねえ。数を束ねりゃ勝てねえ奴なんて……」
「お前程度じゃ千人居ても歯が立たない」
「んだとてめえ!」
「お止めなさい卓也さん」
 タクが激昂してヴォルフに掴み掛かろうとするが、村長の言葉で動きを止める。
「ヴォルフさん。続きを……」
「ちょ、村長? 何でソイツの肩を持つんスか!?」
「卓也さん。彼の話はまだ終わっていませんよ。議論はその後でも出来ます。さ、続きを」
 村長に促されたヴォルフは口を開いた。タクがヴォルフを睨んでいたが、相手にする意味が無いので無視する。
「どちらにしろ、勝ち目の無い相手に挑んだ所で死傷者が増えるだけだ。湯治客の方はギルドや村のハンターが護衛を受け持つように手配して事に当たれば良い」
 ヴォルフは一旦言葉を止めて、用意された茶を飲んだ。この地独特の渋みと苦味のハーモニーは心に涼風をもたらすかのようだ。要するに美味い。
「そして、村やその他の地域に侵入してきた者を、ハンターが狩る。山菜等の収集も同様だ。知識を持たないのならば、収集者の護衛として同行するのも良い。出来ることはこれ位だ」
「……」
 ヴォルフの話が終わるが、村長は沈黙したままだ。
「ヴォルフさんが戦ったジンオウガは、どの位お強いのですか?」
「……底が見えない。『理性』を備えているとしか思えない『戦術』を取る」
 理性と戦術。この言葉の意味が分かる者がこの場に居るだろうか……
「……分かりました。では今一度この場はお開きにしましょう。今後のことは決まり次第連絡しますので」
 村長が言い終えると共に立ち会って退室
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