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人狼と雷狼竜
ひとつの答え
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撓る尾の一撃はナルガクルガの胴を捉え、地面に叩き付けていた。
「ガ……ギィ」
 打ち据えられたナルガクルガは苦しげに呻きながら起き上がろうとするも、激痛の為か中々起き上がれない。
「な……何故?」
 小冬がジンオウガを見て呆然と呟いた。それはその場の全員の心境を表していた。
 ジンオウガが小冬達一行を始めて視界に入れた。目が合った者の殆どが後ずさるか恐怖で腰を抜かすか顔を引きつらせたりしたが、小冬を始めとした六人はジンオウガを見据えていた。
 そして地面を打つ音が一行の中心から鳴る。意識を戻したヴォルフが拳を打ち付けてその反動で立ち上がった。
「ヴォルフ君!?」
「ヴォルフ!」
 ジンオウガの視線がヴォルフに向くが、視線を向けるだけでジンオウガは何もしない。
「総員撤退準備」
 ヴォルフが抜き身のままだった刀を鞘に収めて告げた。
「はああ!? お前、コイツが易々と逃がすとでも……」
「急げ。ハンターは動けない湯治客を支えろ」
 タクがヴォルフに食って掛かるが、ヴォルフはそれに答える事無く他の者達に指示を出した。その態度にタクが背負った太刀に手を掛けようとするが、その太刀は抑えられたように動かない。
 タクが驚きながら振り返ると、背後にはテツが居り、目が合うと首を横に振った。大人しく指示に従えと嗜めるように。
 ハンター達が湯治客を立たせる中で、ヴォルフはジンオウガを見た。
 ジンオウガは既に視線を外して、今は起き上がろうとしているナルガクルガを見据えている。どうやらナルガクルガを仕留める気は無いらしい
「準備できたぞ」
 正太郎の言葉でヴォルフは一行を見た。全員が準備を完了させていた。
「行け!」
 ヴォルフの言葉で、武器を手にした小冬と梓、椿を先頭にしたハンター達が村への道を歩き出し、武器を失ったテツや正太郎、朱美を始めとした者達が湯治客を伴い、最後尾には神無と夏空が就いた。
「ヴォル君?」
「今行く」
 神無の言葉にヴォルフは振り向きながら答えた。
「……またな」
 そう呟くと、ヴォルフは夏空と神無の二人と共に最後尾に就いて撤退を始めた。最後にヴォルフが見たものは、空へと逃亡するナルガクルガとそれを見送るジンオウガの姿だった。 





 村に戻ったヴォルフ達一行は、集会場にて怪我の手当てを受けながら村長に事の次第を報告していた。
「そうですか。ですが、犠牲は最小限に抑えられたと思います。お疲れ様でした」
 梓の報告に、村長がハンター達に深々と頭を下げる。
「村長。今後の方針だが……」
「何でしょうか?」
 今回は衝撃波や打撲による打ち身程度で済んだヴォルフの言葉に、村長は佇まいを整えて訊く。
「ジンオウガは討伐しない」
「えっ!?」
「何だと!?」
「……」
 ヴォル
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