ひとつの答え
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の全身を使った体当たり。対するヴォルフは宙返りで後退し、着地と共に一気に接近し地を這うような下段からの切り上げを繰り出す。
対するジンオウガはバックステップで後退する……と見せかけて反転、その大きな尾で薙ぎ払うがヴォルフは切り上げた際の回転を殺すことなく、遠心力の加わった斬撃を伸びきった尾に繰り出す。
それは互いに空振りに終わるものの、双方の間で生じた圧力が衝撃波となって周囲を走った。
そして互いに睨みあう一人と一頭……。
「……人間の動きじゃねえ」
絞り出すような声で呟くタク。その言葉に意義を唱える事は、朱美には出来なかった。あれは獣の動きだ。この場での最適な体の動かし方を心得ている獣のそれだ。
互いに距離を取って睨み合う。
ヴォルフには少しずつジンオウガの動きが見えるようになって来た。だが、まだ奴には追い付けてはいない。あの夜はもっと速く、更に言えば今は雷光虫すら纏っていない。尤も、雷光虫は夜行性だ。昼間に纏うのは不可能だろう。
先程の尾の一撃はまだ効いているが、骨に異常は無い。
全力の抜刀を試みようと思ったが、すぐに撤回する。何らかの方法で隙を作ってからでなければ躱される。ならば出来ることをやるだけだ。
ジンオウガが動く……ヴォルフに視線を合わせたままゆっくりと近付きそれに連れて……重圧が徐々に重くなっていく。繰り出されるのは渾身の一撃だろう。
重圧が徐々に大きくなっていく。それは降り注ぐ雨のようなものだ。溜まった水が川を増水させて堤防を破壊するように、今まさに決壊するその瞬間が訪れようとしている。
ジンオウガが身を低く構えた。全身の力を後ろ足に溜め、その威力を一気に爆発させようとしている。
それは引き絞られて張り詰めた弓の弦を思わせた。放たれる矢はジンオウガそのものだ。それは雷神の一撃となって敵を絶殺し得る真の意味での必殺の一撃!
重圧が弾けた!
繰り出されるは大きく振りかぶった前足での一撃。それは体重の乗った前足での強打とそれによって生じた衝撃波の二段構え。それは先日に見たものだ
ヴォルフはそれが決まりきる前に生じる隙を突くべく敢えて前に出て抜刀した。
狙うは指の間。そこから一気に逆風に切り上げ、返す刃を唐竹割りに振り下ろす!
しかし、そうはならなかった。振り上げたヴォルフの刃は、そのあまりの速さ故に甲高い不協和音を発して森中に響き割ったが、空を切る結果に終わった。
対するジンオウガは不動のまま、先の場所に立っていた。例えの通り山の如く。
(しまった! これは……)
ヴォルフが己の不覚を理解した時にはジンオウガは動いていた。今度こそ、その前足を多き持ち上げて前に出る。
(プレッシャー・デコイ!?)
目の前で地面が弾け、土砂
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