ひとつの答え
[3/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
い。
―――――また手加減された。ジンオウガは直撃の瞬間に、撓る尾を静止させて必殺の威力を殺したのだ。
刀を杖代わりに地面に刺して起き上がる。
神無達が自分を呼ぶ声が聞こえるが、その声には応じずにジンオウガを見る。
ジンオウガは堂々と、その場でヴォルフを見据えていた。その佇まいは余裕に満ちている。その瞳が声無き声で尋ねてくる『こんなものか?』と。
否! まだ、やれる。ヴォルフは刀を鞘に収めて居合いの構えを取った。
好機があろうと無かろうと、自分のやる事は変わらない。全力を持ってジンオウガに挑む。
折角の再会だ。あの時と立場は違えど、お互いの間にある物は何も変わらないのだから。どちらが倒れようと、決して変わらない。
「ヴォルちゃん!」
「……立った」
夏空と小冬には信じられなかった。ヴォルフの刃は間違いなくジンオウガを捉えると思ったのだ。なのにジンオウガは思いもしなかった対空式の攻撃法を持っていた。
そしてヴォルフを襲う、丸太よりも太く凶悪な硬さを持った凶器の尾。それに打ち据えられた。
そして地面に叩き付けられた。普通なら死んでいてもおかしくないと思った。なのにヴォルフは立った。
「え?」
「ヴォルフさん……どうして、笑っているの?」
ヴォルフは、静かに笑っていた……楽しそうに、嬉しそうに。普段全く表情を変えないヴォルフが、確かな表情を見せた。それは明らかな喜びだった。
「ヴォル君……ダメだよ」
絞り出だされるような神無の声。その声は、泣いていた。
「ヴォル君……」
「神無……キミは何を?」
神無の雰囲気が危ういほどに揺れていた為、朱美は彼女を訝る。口ぶりからして彼女が何かを知っていることは明白といえたが、今はそれどころじゃない。
「おい朱美。ヤベエぞアイツ」
太刀を背負っているタクと呼ばれたハンターが朱美に話しかける。
「分かってるよ。あのジンオウガは馬鹿みたいに強い。迂闊に手を出せば危ないのは……」
「違ぇよ。人狼の方だ。見ろよ」
「え?」
タクがつい先程自分達を助けてくれた人物を悪く言うの聞いて、思わず怒りがこみ上げて来たが、その後の言葉に釣られてヴォルフとジンオウガを見る。
それは、全身をフルに生かした体術を用いながら刀を振るうヴォルフと、応戦するジンオウガの姿だった。
ヴォルフの剣はまだジンオウガに届いてはいないが、少しずつ、そう……少しずつジンオウガに追い付き始めていた。
逞しい前足の一撃を旋回しながら跳んで躱し、ヴォルフが着地すると共に、地を穿ったジンオウガの鱗に朱線が走る。躱し際に斬り付けていたのだ。
それは鱗の表面を軽く傷つける程度だったが、それでもジンオウガに当てたことには違いなかった。
次いで繰り出されるジンオウガ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ