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打球は快音響かせて
高校一年
第十話 ゆく年、くる年
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とう。今年も走って初詣か。熱心だなぁ。」
「そうよ!やっぱりここの神様に、甲子園でも打てるように願掛けせにゃいけんと思うてな!」
「あれ?お前、試合出れるのか?」

宮園は心の中では意地悪く笑っていた。
福原の所属する帝王大水面は、昨秋に三龍を破り、そのまま東豊緑大会でも準優勝して選抜甲子園への出場を決めた。ただ、福原はベンチにも入っていなかった。

「おう!秋は腰いわしよったけど、今は万全やけ!先に甲子園味わってくるわ!」
「そうか。頑張れよ。土をお土産に持って帰ってきてくれ。」

宮園は顔ではニッコリ笑っているが、内心ではクスクス笑っている。本当にベンチ外れたのは怪我のせいなのか?単純に実力不足じゃないのか?
宮園は福原のやたらとプラス思考な人となりを思い出していた。またそんなに、モノを都合良くとらえちまってさ。

「お、これはこれは彼女さんか?光にもやっと彼女が出来たんやなぁ!」
「そうです〜!青野です〜!去年の9月からお付き合いしてま〜す!」

福原は青野にも気さくに話しかけ、青野も福原に愛想良く挨拶した。あぁ、バカ同士だから波長が合うんだなと、宮園は思った。

「こいつなぁ、俺と違ってよっぽどモテるのに、全然彼女作らんのやけ!まぁ青野さんほどの女やないと、こいつは落とせんばい!」
「いやいやそんな〜」
「何言ってんだよ康毅。お前の方がモテてただろうが。」

それは事実だった。多少イケメンでも性格がねじ曲がっている宮園より、前向きなオーラを放っている福原の方がよっぽどモテていたのだ。宮園にここまで執着する、青野の方が異常だった。

「でもね〜、俺今彼女居らんけんな〜」
「あれ、前の彼女とは別れたの?」
「いや、振ったんよ。野球に集中する為に。」

最後の一言だけ、福原の目が笑っておらず、宮園はドキッとした。その視線に、少しばかりの非難の成分が感じられたからだ。

「あ、ヤバい!俺ちょっと用事あるけん、早よお参りしてこないけんばい!じゃあな2人とも!」

最後にそう言って、福原は階段を駆け上がっていった。全く、最後まで騒々しかった。

「テンション高い人やったね〜」
「………」

青野が呑気に言った感想には返事もせず、宮園は少しイラついた目で福原の背中を追っていた。

(彼女なんて作ってチャラチャラしやがってって事か?生憎な、俺はお前ほどバカじゃねぇんだよ。お前みてぇに自分の実力を過信できねぇよ。どうせ甲子園なんて無理なんだったら、適当に彼女でも作りながら、楽しげにしとくのがよっぽど賢いんだよ)

心の中で毒づいてから、宮園は青野の手を取り、階段をゆっくりと登っていった。





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