高校一年
第十話 ゆく年、くる年
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え?」
「近所の神社までだよ」
翼は葵の手を引いて出て行った。
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「…って感じで、カナコが父ちゃんとかに言うたけぇ、もういつもおちょくられて大変よー」
「…でもやっぱり、元の原因は葵じゃ…」
「友達に言われるんと大人に言われるんは訳が違うけぇ!そんくらい普通空気読むやろって話っちゃ!」
葵は頬を膨らませてむくれる。この癖は変わってないよなぁ、と翼は思う。こうして2人で歩いているうちにも、何人もの近所の人に声をかけられた。
ピューっと風が強く吹く。木凪は温暖だが、しかし冬は風が強いので体感温度は思いのほか下がる。普段着のまま家から出てきた葵は寒そうに身をすくめた。
(………)
翼は唐突に葵の腰に手を回し、ムギュッと脇に抱いた。葵は「ひゃっ!」と頓狂な声を上げ、翼の顔を見上げて、島の子らしい健康的に日焼けした顔に照れ臭そうな表情を浮かべる。
翼がその腕に感じる葵の感触は、引き締まった弾力があったが、初めて抱いた時より少し柔らかみが増したような気がする。そして体温がある。何とも言えず心地よい温かさだ。
(周りがどう変わろうが、こいつさえ変わらなきゃ、まぁ良いのかなぁ)
ショートカットの葵の髪からは、やたらと良い匂いが漂ってくる。翼は自分の顔が緩んでくるのを感じた。やたらと葵が可愛く見えた。
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「ヒ・カ・ル・くーん!」
「やぁ、あけましておめでとう」
宮園は初詣に来ていた。
自分の家の近所の神社まで、電車に40分揺られる距離の自宅から青野がやって来ていた。
昨晩に初詣に行こうと青野がメールしてきたので、宮園は意地悪をするつもりで俺の近所の神社に来てくれるなら、と吹っかけたら、そしたら本当に青野は来たのである。宮園はこういう事を何回も繰り返していたが、その度青野は文句も言わずに従った。あまりにも素直に従うので、そろそろ宮園も興ざめしていた。やはり、2回振ってもなお食らいついてくるだけあって、こいつは相当俺の事が好きか、それか相当のバカだ。両方な気もするが。
「嬉しいなぁ〜光くんと一緒に初詣なんてなぁ〜」
「ほらほら、早く行くぞ」
ベタベタと自分にくっつく青野に宮園は苦笑いする。みなみに、宮園家は日付が変わるとすぐ初詣を終えるので、宮園にとってはこれが初詣ですらない。
「……おぉ、光やんけ!あけおめやね!」
「あぁ、康毅じゃないか。久しぶり。あけましておめでとう。」
神社の階段を青野と登る宮園に、顎の発達した縄文顔の少年が話しかけてきた。この少年は福原康毅。宮園とは小学校からの付き合いで、水面西ボーイズでは宮園が3番、福原が4番だった。
「選抜出場おめで
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