#プロローグ『《魔王》』:2
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だあるのは、何かが採掘された後と、壊れた機械と、岩と、荒野だけ。
「……こんな何もない所に?」
「ええ。私たちの《城》があります。それに、文献に寄れば百年ほど前まで栄えていたらしいですよ。もっとも、今は何も出ませんがね……」
少女の質問に、リビーラは答える。そのまま飛行すること数分。岩の間に、奇妙なゲートがある場所に辿り着く。一行の乗ったソーサーは、そこに入って行った。
内部は、やはり最新式と思われる設備であった。シュートのエスコートを受けてソーサーを降りると、少女が一生で一度も嗅いだことの無いほどの澄んだ空気の匂いが漂ってきて、驚かされる。
そのままリビーラに促されて歩くこと数分。彼は、一つの場所で立ち止まった。
「ここです」
それは――――巨大な扉だった。そう、恐らく今まで少女が見てきた中で、最も巨大な。装飾は華美だが、決してけばけばしいとは思わせない何かがある。むしろ「ああ、当然だ」「これでこそ《彼》にふさわしい」という不思議な感覚。
なぜ、そう思ったのだろう。恐らくこの向こうにいると思われる、彼らが言うところの《王》には、少女はまだ一度も会った事がないはずなのに――――
少女の思考を、しかしリビーラの衝撃的な一言が断ち切る。
「それでは、私たちは此処で」
「え!?私一人で行くの!?」
驚愕である。てっきりリビーラ達も来るのだと思っていたのに……。答えたのは、シュートであった。あくまでも冷静に言う。
「あなた一人で来い……《魔王》は、そう仰いました」
「頑張ってね、お姫様〜☆」
無邪気に手を振るククリ。さぁ、王が怒り出さないうちに、と言うリビーラの声に無理やり後押しされ、少女は扉に手を掛けた。
ぎぃぃ、という音を立てて、意外なほど簡単に巨大な二枚扉は開く。その先は、完全な漆黒であった。
「真っ暗……何も見えないじゃない……」
思わずそう呟かずにはいられない光景。背後でごごん、という音と共に扉が閉まると、完全に光は無くなった。
あたりを見回す少女は、ふと、こつん、という何者かの足音と、そして、聞いたことはないはずなのに、どこか懐かしい『その声』を聴く。
「やっと来たね」
やさしい、穏やかな声だった。
「誰!?」
その声のした方向に、はじかれたように振り向く少女。いつの間にか、階段と思しきその場所の左右には、光がともっていた。《教会》の支部にすら数少ない、永遠に光をともし続ける魔力の灯だ。それが、何個も、いや、何十個もともっているこの状況に、動揺を隠せない。
声の主は、苦笑混じりの声で言った。
「いきなり『誰!?』はひどいなぁ。……そうか。君は僕の事を覚えていないん
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