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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#プロローグ『《魔王》』:2
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なんてことはないように人を殺したのを見て、絶句してしまったのも当然のことである。

 その感情を見透かしたかのように、リビーラがこちらに少しふりかえって言った。
 
「なぜああも簡単に殺せたのか、とでもいいたげですね?」
「え!?え、え〜っと……」

 ズバリと考えていたことを言い当てられて、言いよどむ少女。しかし、リビーラはそれに微笑でこたえる。

「私なんて可愛いものです。これからあなたが出会う二人組と比べれば」
「二人組……?」
「ええ。言ったでしょう?『あの程度』で驚いていては失神してしまう、とね……さぁ、着きましたよ」

 そう言って、リビーラは、古めかしい、さびたドアを開ける。ぎぃぃ、という不気味な音が響き――――
その中は、少女が予想していたものとは全く異なっていた。

 ソーミティアの街に、これほどの設備があったのか、と思えるほどの、最新鋭の整備設備。恐らく、《教会》支部専用のソーサーを置いてある部屋よりも高級なのではないだろうか。見たことも無いモデルの作業用機械(ワークローダー)があちこちで動いている。
 
 しかし、その作業用機械(ワークローダー)が整備しているソーサーだけには、見覚えがあった。

 流線形のシルエット。先端から左右にかけて、V字型のウイングが伸びる。背部には最新モデルと思われる、コーン型の《重力操作機関》。

 少女は、震える声でそのソーサーの名前を言う。

「304年型ソーサー……《王都》でしか使用されてない限定車じゃない……!」
「ほう、詳しいですね、姫様。もっとも、現在使われているのは306年型……これは一代前の流行ですよ。もっとも、いまだ最も多く《王都》で使われているのはこれですがね……」

 リビーラが反応し、言う。それもそうだ。幼いころの少女が持っていた唯一の『遊び道具』と言えば、今は亡き父親が残してくれた、ソーサーの全モデル網羅図鑑だったのだ。普通ソーサー鑑賞なんて男の子の趣味だ、と、少女はこの趣味をちょっとだけ恥じていた。

「だ、誰でも知ってるわよ!!こんな有名なソーサー……あなたホント一体何者……」

 照れ隠しのつもりで、そこまで叫んだ、その時。

「あ―――――!!リビーラ様やっと来たぁ―――――!」

 何者かの叫び声がした。メゾソプラノと言うのか、高すぎずも無く、さりとて低くもない。多少子供っぽい色があるが、完璧と言っていいほど統制のとれた女性の声だった。

 同時に、二つの影がソーサーの上から落下してくる。

 ドスン!という音と共に、二つの影が着陸――――否、着弾する。長いツインテールを払いながら立ち上がったのは、クリムゾンレッドの髪の少女だった。年は少女と同じくらい、もしくは一歳ばかり下か。露出している右腕
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