#プロローグ『《魔王》』:2
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言葉が浮かんだ。
「り、リビーラ……様……こ、これ……は……?」
「《無針高圧注射器》という通販で買った代物ですよ。一週間ほど前に間違えて取り寄せてしまいましてね?使い道がなくて困ってたんです」
よくやってしまうんですよ、取り違え、と呟きながら、リビーラはより一層嗤みを強めて歓喜に彩られた声で雑兵に語りかける。
「本当はあなたのような善良な若者を殺したくはなかったのですが……どうしてなかなか。こんな《毒殺》も良い味を出しますね」
最後にリビーラがニヤリ、と嗤うのと同時に、雑兵の肩から完全に力が抜けた。どさり、音を立てて倒れた雑兵は、もう息をしていなかった。リビーラの注射した液体によって、死に至ったのだ。それを確認して、リビーラは雑兵の遺体、その懐をまさぐる。取り出されたのは銀色のカード。ソーサーステーションのセキュリティーキーだ。
凄絶な一幕に絶句して、呆然と立ちすくむ少女に、リビーラがくるり、と振り向いて問いかける。
「どうしました姫様。そんなようではこの先、毎日失神してしまいますよ?」
「え、ええ……」
少女が何とかそれだけを言うと、リビーラはあの爽やかな、しかし毒のある笑みを浮かべて、ソーサーステーションの、人がいない一角…そこには、普通なら見落としてしまいそうな裏路地があった…を指さして、言った。
「さぁ、行きましょうか。彼らに追いつかれてしまいます。意外とあなたの罪は重いんですよ?」
先程奪い取ったカードを、裏路地を塞いでいた扉のドアノブにスキャンさせるリビーラ。その手並みは鮮やかで、《慣れ》すら感じられた。
もうそれ脱いでもいいですよ、と、裏路地に入った直後にリビーラは言った。少女はリビーラの後を追いながら、雑兵の服を脱ぎ捨てる。新鮮な空気を吸い込むが、しかし、すがすがしさは無かった。
それらの動作を行いながら、少女は別のことを考えていたからだ。それは、リビーラの先ほどの行為に対する感想。
―――――人殺しを忌避しなかった。
「(一体なんなの?この人……)」
それが、少女がリビーラ・ロイ・セイという男に対して抱いた感想だった。教会の雑兵ですら、簡単に人を殺すのを見たことがない。基本的に彼らの仕事は、罪人を捕まえて、それ相応の罰を与えることだけだ。
ソーミティアの貧困が悪状況であったのは、『死なない』ことでもあった。もっと状況の悪い《箱舟》では、飢餓によって住民が死に至るという。しかし、ソーミティアでは、飢えはあっても、しかし『飢え死に』することはなかった。延々と、死なない程度の飢えが続く。これが永遠に続くくらいなら、死んだ方がいい、と思えるほどに。
だから、少女には《死》に対する耐性が、思いのほか少ない。リビーラが
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