#プロローグ『《魔王》』:1
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、金色の十字架……俗にいう《ロザリオ》という奴だった。《教会》のトレードマークだ。
「おや」
やはり嫌われているようですね、と男は呟いた。そして直後、驚くべき行動に出た。
「申し遅れました」
少女に向かって跪いたのだ。そして男は、頭を垂れ、左足を立てる、臣下の敬礼をとる。
「!?」
なに、これ。なんで?どうしてこの人はこんなことをしているの?
少女の内心を無視するかのように、男は顔をあげると、再びあの毒を含んだ笑みを浮かべ、堂々と名乗った。
「私はリビーラ。リビーラ・ロイ・セイと申すものです。お迎えに上がりました。姫様」
そこで男――――リビーラは、一拍の間をあけた。そして誇らしげに、その続きを言い放つ。
「――――我が《王》の元へ」
「王……?」
《王》、と言われて少女がまず思いつくのは、《教会》の指導者たる《教皇》だ。実際、目の前にいる男は教会の司祭の格好をしている。だが、少女にはそれは違う、という予感があった。だって、《教皇》からの使者なら、自分たちの仲間を殺す/気絶させるなどと言ったことはしないはずなのだから。《教会》の仲間意識は、たとえ相手が雑兵であっても、非常に強いのだ――――。
その時だった。ぶぅぅん、という、重い音がした。耳慣れた車の音――――
「おや、呑気に話をしている場合ではなさそうですね」
リビーラは音のした方向を見ると、気楽な笑みを浮かべ、少女の腕をつかんだ。
「え……え!?」
困惑する少女を引っ張り、リビーラは近くに止めてあった、《教会》の雑兵たちが乗ってきた装甲車両に乗り込んだ。装甲車両は教会雑兵が好んで使用する大型の自動車で、一種のキャンピングカーのような設備も備えている。それだけでなく、対装甲車両用のマシンガンやバズーカ等の兵装も搭載した優れものだ。
「乗って!!しっかりつかまって下さい!!」
リビーラはシートベルトを締め、少女にも促す。少女が乗り込み、扉を閉めた瞬間、彼はエンジンをかけた。どるん、どるん!!という重い音が鳴り響く。いまどき珍しいガソリンエンジンを搭載しているらしいこの装甲車は…一般的に装甲車はソーサーと同じく重力操作機関で動く…通常機の物より強い馬力を持つようだ。
「舌を噛み切らないように……」
そしてリビーラは、アクセルを大きく踏み込み――――
「気をつけてくださいよ!!」
装甲車両は、恐ろしいスピードで加速した。
「キャァアアアアアア!?!?」
少女が悲鳴を上げる。彼女はこういう加速系の乗り物が大いに苦手なのだ。出発してから何秒とたっていないのにもかかわらず、すっかり目をまわしてしまった彼女をしり目に、リビーラはバックミラー
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