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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#プロローグ『《魔王》』:1
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《ガァト》》、《十字騎士(クロスラウンズ)》の団長達、そして《十五使徒(ファルクシモ)》は全て《刻印》使いだ。

 それほどまでに、《刻印》とはこの世界において重要なものなのである。
 
 しかし――――

「数で押せ!!相手は1人だ!!」
「お、おう!」

 《刻印》という物にもレベルがある。それこそ、魔術に階位があるように。《七星司祭》などの最高位司祭ともなればその《刻印》の力は相当なものだが、下級ランク《箱舟》の生まれの、それも何の訓練もしていない、能力の暴発に頼るしかない少女の攻撃では、多勢に無勢。数で勝る雑兵をすべて駆逐するなどできない。

 かくなるうえは、自分が大けがをするかもしれないが玉砕覚悟で能力を完全開放(フルバースト)させるか……?

 少女が覚悟を決めるべくギュッと拳を握りしめた、その時。

「いいえ?一人ではありませんよ?」

 どこからともなく、若い男の声が響いた。

 上だ。少女を追い詰めていた後ろの建造物、その上から声がする。その場にいるほぼ全員が声の主を探して上を向いた。

 そして、その言葉はつむぎだされる。
 
「《荘厳なる雷(マジェスティック・サンダーボルト)》」

 瞬間――――

 少女のそれとは比較にならないほど高電圧で強力な雷が、少女だけをきれいにはずして、雑兵たちにヒットした。

「ぐはぁ!」
「ぎゃぁ!?」
「がはっ!」

 口々に悲鳴を上げ、ぷすぷすと黒煙をたてながら倒れる雑兵たち。一人として立っている者はいなかった。

「な……」

 少女が絶句してあたりを見渡していると、ドサッ、という音がして、何かが上空から背後に着地した。

 バッと後ろを振り返ると、そこに立っていたのは、長い金髪の上部に、羽のような形の二房の癖っ毛…一般に『アホ毛』と呼ばれるそれだ…を生やした、眼鏡の男だった。黒い修道服が、どこか執事めいたイメージを抱かせる、奇妙な雰囲気を纏った男だ。

 男は少女に向かって、一歩踏み出すと、ニコリと笑いながら言った。さわやかだが、どこか毒を含んだ笑みだった。

 そして男は、とんでもないことを言った。

「危ない所でしたね、姫様」
「え……?」

 姫様―――――?

 なんだ、それは。

 少女は絶句した。少なくとも少女はそのような高位の地位をもった人間ではない。下級ランクの箱舟に住む、普通の両親のもとで、普通に育ってきた少女だ。もっとも、両親は少女が十二歳の時に相次いで他界してしまったが……。

 呆然と男を見つめた少女は、ふとその首からかけられている者に目が留まった瞬間、息を吸い込んだ。

「――――っ!!《教会》!!」

 再びの緊迫感。男の首からかけられているのは
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