#プロローグ『《魔王》』:1
[3/6]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
兵は続ける。
「それにありゃぁ、ただののリンゴじゃねぇ……」
もったいぶった仕草をする雑兵。すると、彼の言葉を奪って隣にいたもう一人の雑兵がつなぐ。
「あれは、我らが《教皇》、アドミナクド陛下に捧げるリンゴだ!!」
てってれ〜、とでも効果音がなりそうなほど誇りに満ちた叫び。ポカーンとする少女。
《教皇》とは、この世界を実質支配しているに等しい組織、《教会》の最高司祭の事だ。現在はアドミナクド・セント・デウシバーリ・ミゼレという名前の白髪とも銀髪とも取れる青年が務めている。《教皇》は神威に匹敵する術を使えるとも噂され、一般人は一生かけても手に取れない最強の《禁書》、《唯一神》を保持すると言われている。
いくら反《教会》活動をしている身、それも下級クラスであるFランク《箱舟》の住民とはいえ、さすがにこの世界の王に献上する物を盗んだということに対し、罪悪感がわかなくもない。
だがその罪悪感は、あっさりと消え去る。
「捨ててあったやつでしょこれ!」
「うるせぇ!そんなの関係ねェ!!」
適当だ。本当に適当だ。少女は一歩後ずさりする。もちろん、後退の意味ではない。ドン引きである。
そしてその感情は、続けて投じられた雑兵の言葉で、確固たる憤怒に変わる。
「マーカー1本じゃすまされねぇぞ!!」
「さぁ!大人しくしろ!!」
冗談じゃない。知人にもマーカー刑にあったものはいるが、痛々しいにもほどがある。なにせ、まずは《顔から》なのだ。
そんなの、乙女に対して許される行動ではない。
「乙女の肌に焼印とか……」
少女の、長い金髪に隠れた左目が光る。
「ふざけてんじゃないわよ!!」
バチィ!!
電撃が走る。雑兵の一人が悲鳴を上げて崩れる。
「ぐは!?」
「しまった!こいつ、《刻印》持ちか!!」
《刻印》。それはこの世界の住民が、まれに所持する特殊能力だ。多くの場合右腕か左腕に出現し、その中には《刻印魔術》という魔術が封じ込まれている。
すでに魔導の技術がこの世界から消えて久しい。統治者である《教皇》を除いた《教会》の最高機関である《七星司祭》が一人、第三席《古の錬金術師》セルニック・ニレードをはじめとし、魔術使いはいまだこの世界には残っている。しかし彼らもまた、古の魔術の再現を可能とする、己の《刻印》によってその力を得ているに過ぎない。魔術は、使用するために重要な『大地とのつながり』を、世界の崩壊と共に失ってしまったからだ。
《刻印》使いの多くが、《教会》の高官として招かれる。事実、《教会》本部に住まう司祭のほぼ100%、特に《|七星司祭
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ