#プロローグ『《魔王》』:1
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が問題だ。《教会》の支部もあるし、他の《箱舟》とソーミティアを行き来する浮遊船も定期的に訪れる。
ただ、それらの恩恵は一切一般市民には与えられない。一般人はなまじ人数が少なくないため、少量の食料や物資を奪い合い、隣人を疑い、憎みあう。
それはソーミティアに限ったことではない。今東西あらゆる低ランクの《箱舟》は、どこもこのような感じである。見捨てられないのは、多少なりとも鉄鉱石などの物資を採掘できるからだ。ちなみにソーミティアでは石炭が取れる。石炭は低ランク《箱舟》内の重要な移動手段である機関車などの燃料になるため、《教会》もそれなりに役立てている。
それが、この街を《教会》の支配から抜け出させ無くしている部分でもあるのだが。
「痛いわね!!放しなさいよ!!」
そんな風にして教会に支配された町に、少女の声が響く。
白い防菌服のようなものに身を包んだ兵隊――――教会の雑兵に囲まれているのは、すすけてくすんだ金色の髪を持った、青い眼の少女だった。顔の左半分は長い前髪によって隠され、よく見えない。下級ランクの箱舟に住む人間の例にもれず、少女も薄汚れたみすぼらしい服装をしていたが、きちんと汚れを落としてきれいな服に着替えれば、相当な美少女の部類に入るであろう容姿であった。
「何よ!何のつもりよ!!」
「黙れ、盗人!!」
《教会》の組織に入るためには、司祭階級を得なくてはならない。しかし、少女にふり払われた教会雑兵は、本当に司祭の資格を持っているのか不思議になるくらい乱暴に答える。そうだろう。腐敗した《教会》の下位組織は、正式な司祭の資格を持っていない傭兵の様な存在が雇われていることがある。じっさい、彼らもそうなのだろう。もっとも、《教会》に対する忠誠心は最低限持っていなければいけないので、彼らも『独裁組織としての』《教会》の一員としては十分なのかもしれないが……。
「うっせぇアマだな!大人しく捕まれ!」
雑兵が荒々しく叫ぶと、少女は思いっきり顰め面をして反目。
「嫌よ!捨ててあったリンゴ一つ盗っただけで何で捕まらなきゃいけないのよ!!」
「俺達《教会》のルールじゃぁそれも焼印刑なんだよ!!」
焼印刑、というのは《教会》が一般的に行っている刑罰の事だ。犯罪を犯した者の肉体に線状の焼印を付けて、前科の数を確認するのだ。場合によっては刑罰の格上げもある。なお、あくまで焼印は下位刑であり、殺人などの重罪を犯した者は肉体の没収などが行われる。
少女の持つリンゴはすでに一部分が腐り、食べられる状態ではない。だが、彼ら教会雑兵はゴミを盗んだものでも処罰しないと気が済まないのであろう。
さらに教会雑
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