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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
5 「血華葬」
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ら、それも仕方ないと許容することにしたようでした。
 お兄様は立派な“おにいちゃん”でした。今の汀の懐きようからもそれは分かりますけど、たとえば外で鬼事をするときも絶対2人に怪我なんてさせませんでしたし、昔からそれほど体が強いわけではなかった私に屋内の遊びもたくさん教えてくださいました。…その遊びで、私はポッケ村の子供たちとお友達にもなれました。

「よく、雨―――ポッケ村の場合は大抵が雪だったんですが、珍しい雨が降っていて外で鍛錬が出来ないときなどは、ざら紙の裏によく分からない数式を幾列も書き殴っていました。以前大陸を渡り歩いたと自慢の商人だったおじさまも知らないような高度な算術を知っていたり、暗号のような何かの文字を使ってご自分で辞書をお作りになられていたりもしていましたね。あるいは、その記号なのか文字なのかも私たちにはわからないような模様を使って、何かのフレーズや手紙のようなものを書いていました。その暗号のようなものは、ついぞ私にも教えてくださいませんでしたけれど……。
 ただ、『忘れないようにするため』とだけ言って私に微笑んだお兄様は、なんだかいつもより更に大人びていて、その表情は強く、印象に残っています」

 私の敬愛するお兄様は本当に、誰より優しく、気高く、誰より強くて……

「……でも、誰よりも孤独でした」

 小皿に置かれた茶菓子を二又のフォークで切りながら、雪路は間をあけた。その表情は、過去の自分を責めているようであった。

 私、今でも後悔してるんです。
 あの頃、物心ついたばかりの私でもわかる孤独を、孤高というにはあまりに寂しすぎた凪お兄様の背中を、私はなんで見ていただけだったんだろう、って。
 そのまま駆け寄って、抱き付いていたら。そうしたら、お兄様はきっと振り向いて微笑んでくれました。でも、私はお兄様のあの押し殺したような微笑が、あの頃はちょっと怖かったんです。何か、お兄様が私たちとは違う存在だ、と感じてしまうような……。同じ人間なのに、おかしいですよね。今考えてみると。

「その凪お兄様の孤独を一層深めたのが、ポッケ村近辺に出没したドドブランゴの事件でした」

 ポッケ村は切り立ったフラヒヤの雪山に抱かれた村です。一番近くの村は小一時間かかる麓まで行かなくてはありませんでした。つまり、それくらい孤立した村だったんです。よく言えば、“周りを大自然に囲まれた”という表現ができるのでしょうが、その時ばかりはそれが(あだ)となりました。
 私が6つ、お兄様が10のときです。先ほどお話しした、雪獅子と名高いドドブランゴの率いる群が、なんと3つも、よりによってポッケ村の近辺を縄張りとして喧嘩を始めたんです。喧嘩といってももちろん牙獣種に分類される大型モンスターですから、ちょっとそこらへんでブランゴが…
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