5 「血華葬」
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歳にもなると親や周りの大人にならって、彼らも多くはお兄様に白い目を向けるのが常でした。
5,6歳のころは“自分も凪お兄様のようなハンターになるんだ”と言っていたのに、9歳、10歳と成長するにつれだんだんお兄様から離れていく子供たちも少なくありませんでした。……お兄様は、その子たちには何も言わず、ただ投げられる雪玉を冷え切った身体で受け止めていました。庇おうとする私や他の子供たちには、冷えるからダメって、優しく怒るのに。本当に、あのひとは……
すん、と鼻を鳴らした雪路は、眉を寄せつつも黙って話を聞いているリーゼロッテと、もうそろそろ沸点に届くのではないかと心配になる程度にはもの凄い形相をしているエリザを見た。目が合って、ふんわりと微笑む。その微笑には、思い出した過去の回想の憂いが含まれていた。
「大人のなかで元から凪お兄様の味方になってくれていたのは、真砂さんと、菖蒲さんだけでした。お母様……私の、実母である吹雪お母様は、もとからお兄様を快く思っていなかったこともあって……薄気味悪い、と、嫌っていました」
「ちょ、薄気味って……!」
「連れ子とはいえ、旦那の血が半分流れた子供でしょうが! あ、ごめん、ユキ……」
「いえ、いいんです。私もそれについては今でもお母様と口論しますから……。お母様のは、たぶん、亡くなった深雪おばさまへの嫉妬ですよ。今でも一番愛されているのは、自分ではなく姉の深雪おばさまと思っているのでしょうね……」
「死者に嫉妬って……ああごめんなさい。ほんと駄目ね、思ったことすぐ行っちゃう癖直さなきゃ……」
「でも、言いたいこと我慢するエリザって……想像できないかも」
「ちょ、それどういう意味よ!? リーゼ!」
「それがエリザちゃんのいいところでもありますよ」
「ほんとあんたにユキの爪の垢煎じて飲ませてやりたいわ」
「そりゃこっちのセリフよ、エリザ」
「……」
「……」
「「なぁにおぉう!!?」」
「ま…まあまあ、ほら、2人とも落ち着いて……。続き話しませんよ」
「それは困るわね」
「停戦協定か」
「「……………チッ」」
「お二人とも、顔が怖いです……」
凪お兄様が6つ、私が3つの時に生まれた子は、流産でした。お母様はとても落ち込まれて、食が細くなったりと大変だったのを覚えています。まあ、怪我の功名というべきか、お父様がお母様につきっきりに看病をしたことでお母様の嫉妬心もすこし落ち着いて、同時に凪お兄様に対する態度も少し軟化しました。
そして、それから2年後―――お兄様が8歳、私が5歳のころ、今度は元気な双子の赤ちゃんが2人の間に生まれました。汀と、岬です。
お兄様は2人をたいそうかわいがりました。最初はあまりお母様もいい顔をしなかったのですが、あんまり双子がお兄様に懐くものですか
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