5 「血華葬」
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くいってくれよ……)
祈るように刀身を撫でる。ひそかにポーチから出したのは、先の解毒薬とはまた別の小瓶。中に入っているのは、黄金色の液体だ。
柄に巻いてある滑り止めの赤い飾り紐を取った。長いそれをすばやく、しかし念入りに右手に巻き付ける。コルク栓を抜いて、刀身を抜いた鞘の中に中身を入れた。竜を刺激しないように静かに太刀をしまえば、完成。
狙うは天井。飛竜集う崖のその真上。
目を凝らせば見える、その天盤にはいくつもの亀裂が入っていた。さっき氷柱を蹴り落としたときと、天井に張り付いていたとき。凪が小細工しておいたものだ。
「ふぅ……」
息を吐き、腰を低く沈める。
―――ふわりと、甘い香りが鼻先をかすめた。
シュッ...
一瞬の沈黙ののちに、鋭い風切り音が洞窟に響いた。
空を伝う火。
黄金の油を得た銀色の太陽の焔は天盤へ直撃し、
ピシッ......ガラ...ガラガラ......!
ドガァァァァン!!!!
崩落。天盤を築いていた氷塊が瓦解して、天から次々毒怪竜たちを襲う。
その隙間から4頭の姿を凪は瞳に映した。
―――甘い、酔いそうに甘い匂いは、でも、嫌いではなくて。
同胞に囲まれ死を迎えた竜は、その身を赤に染め上げて、苗床となっていた。
―――見開いた海の瞳の網膜に映ったのは、紅に浮かび、紅に染まる。
わずかな薄紅を中心に宿した、清廉な一輪の、
白蓮。
******
凪お兄様が村の子供たちと自分から接触するのを避けるようになって、半年。
港お父様は兄様に乞われてハンターとして彼を教育していきました。……私の目には、容赦なくお兄様を叩きのめしていたという風にしか映りませんでしたが。
それより前からその片鱗は見えていましたから、当然といえば当然かもしれません。お兄様の学問の才とハンターとしての力量はみるみるうちに伸びて、1年も経つころには一人で鳥竜種、牙獣種を狩れるようになっていました。ドスギアノス、こちらでいう、ドスジャギィのようなものや、ドドブランゴという大きな猿のようなモンスターです。
一般的な6歳の子供では到底なしえない離れ業に、凪お兄様はますますポッケ村の大人たちから忌憚され、同時にますます子供たちからは尊敬のまなざしを受けるようになりました。
「…子供たちはわかっていたんです。自分たちの命を救ったのはまぎれもない凪お兄様で、それを憧れ褒め称えこそすれ、忌み嫌う理由などどこにもないということを」
でも、そうして純粋に凪お兄様を英雄視していたのは本当に幼い子―――当時のお兄様と同い年くらいの子ばかりで、10
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