5 「血華葬」
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鮮な空気のある方―――エリア2に続く、洞窟の入り口へと駈け出した。
視界が完全に紫に覆われる前に進路を決め、目を固く閉じて息を止める。手にしたままの太刀をその膂力でもって振り抜くと、剣圧に毒ガスはわずかに遠のいた。
「げほッ…げほっ、ごほっ……チッ」
少し気管に入ったか。
喉が狭くなる感覚と共に、呼吸をするたび肺が痛む。
警戒を怠らないままポーチから解毒薬を出して飲み下した。途端、苦虫を噛み潰したような顔をして薬瓶を見る。青いラベルの下には、こんもりとバスケットに盛られたベリーと、吹き出しを出すキャラクター化されたウィンクと飛んだハートが眩しいドスフロギィの絵。吹き出しの中は、“MIX BERRY FLAVOR;honey in!!”の文字。
(甘ッ!!)
なんたること。
苦虫ではなかった。しかし方向性が違うだけでスカラー的には同じくらいまずい。
甘いのだ。甘ったるい。甘ったるすぎて死ぬかも。胸焼けしそうだった。
町で調達した解毒薬は、いつも自身が調合したものと異なって口当たりが良いように(という名目で)いろいろなものがブレンドされているということをすっかり忘れていた。見るにこれはミックスベリーフレーバー、らしい。凪の舌には単に甘ぁ〜いシロップとしか感じられなかったが。
(しかもその上ハチミツ入り!? 要らねぇ、マジで要らねぇよこれは!)
どうせならミントフレーバーなどの方がまだよかったと、よく品物も見ずに購入した半日前の自分を恨む。
ある意味逆に毒を飲んだような気分になりながら空になった瓶をポーチに戻した。こういうものは何の役に立つとも限らないから、取っておくべきというのは鉄則だ。ポーチがぱんぱんになったらその限りではないが。
口内に残留する解毒薬の人工的な甘味を水で流したかったが、凪がポーチから水筒を出すより先に、向かって左、洞窟入り口から大きな影が現れた。
言うまでもない。エリア4に置いてきたギギネブラ達である。脳を焼き切ったと思った1頭も、弱っているように見えつつもその脅威の生命力でよろよろと歩いてくる。
しかし、ネブラたちは凪に目もくれず(もとから目はないのだが)、一直線に同族へと駆け寄った。3頭が3頭とも、大量出血でもう歩く体力すら失った仲間へと寄り添う。
「なんだ……?」
先ほどのネブラの大絶叫は、仲間を呼ぶためのものだったのか?
3頭はなぜ傷つき倒れた1頭に集ったのか?
まさか、仲間の死を悼んでいるとでも?
わからない。が、今凪がすべきことはそのことについて考察を立てることでも、当然口内のシロップの味を忘れることでもないのは確かだ。
むしろ、連中が一か所に固まっていてくれているのは都合がいい。
(チャンスは一回。うま
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