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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
5 「血華葬」
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アアアッ!!!

「ッ……らぁ!」

 声と共に振り切り、帰り血を派手に浴びた。
 ギギネブラを斬って血を浴びるということは同時に身体中に張り巡らされた毒腺も断ったということであるので、体にいいものではない。できるなら早く水で洗い流したかったが、もちろんそんなことをのんきにできるのは無事にこの4頭を片付けた後だ。
 もみくちゃに絡まっている4頭を置いて走り出す。2頭目がそのすぐ後ろを追いすがってきた。後ろを見れば追いつかれる。ただ全力で前へ駆けた。
 上がってきた息を整えて、暗い洞窟の奥に目を凝らした。
 入ったのはエリア7。天井にちらりと視線をやってから深く踏み込んで、ひとっ跳びに身長の倍はある崖に飛び乗った。そのまま上に飛び上り、太い氷柱の根本を蹴る。
 重力に従い落ちる鋭い氷柱の先端は、凪を追って洞窟内に入り上を見上げたギギネブラの翼に直撃した。蒸気となって傷口から溢れるのは、体内に流れる猛毒と氷が溶けているからか。
 凪はエリア5の闇の奥に目を凝らした。大きな影が3つ、押し合い圧し合いしている。狭い洞窟の入り口は一度に4頭の飛竜は入れないのだ。

―――今が、チャンス。

 突如翼を凍土に縫い付けられたギギネブラは、その身体全体に走る毒腺を膨らませた。みるみるうちに体表が黒ずむ。

(怒り状態、ということは……)

 移行と同時に、咆哮。

―――今!

 理解するが早いか、つるつると滑る氷に覆われた僅かなくぼみに指をつっこみ天井にはりついていた凪は、やすり状の口が開く一瞬前、天を蹴った。
 気を巡らせた飛竜刀の一撃が、毒怪竜の口を左右に割る。刀身にかかった負荷は腕力と体重で押さえつけた。
 噴き出した炎と血と毒液は、混ざり合ってひとつの赤灰の煙となる。
 ぬめる体液に包まれた肉、酸素を運ぶ血管と、網の目ように全身に張り巡らせている神経に毒腺。顎の骨すら叩き切った太刀は、その本来の使い方をされないがゆえに刃こぼれも目立ち、すでにただの鉄塊と化していた。
 しかし、太刀の刃を代償に得た一撃は十分すぎるほどにギギネブラを弱らせることに成功する。
 満足に響かせることができない自慢の咆哮はヒューヒューと空気がから回る音が目立ち、ぼたぼたと落ちる毒の混ざった血液は徐々に凍土へとしみこんでいく。翼を大地に縫い留める凪の身の丈ほどの氷柱はもうほとんど溶けきってしまっていたが、大穴の開いた翼膜から出血を防ぐ栓の役割を果たしていたそれが消えるにしたがって、また大量の血が流れ出た。

ギェェエアアアアアアアア!!!!!!

 絶叫とともに、2つの大きな傷口からさらに多くの血が吐き出された。

「しまッ―――!?」

 至近距離で血の混じる毒弾をかろうじて避けた凪は、気化したガスから逃れようと咄嗟に新
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