5 「血華葬」
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いのだった。一撃見舞ったら即追撃、が脊髄反射のようにしみついてしまっているのである。
(焦るな……焦るな……)
首の後ろを通ったぴりりとした気配を間一髪で避け、一息つく間もなく3頭目の負傷した翼を足台に跳び上がってさっきつけた一文字をもっと深く抉る。焼き切られた傷口にさらに燃える刃を迎えたそこでは、血が一瞬で気化した音がした。骨を折られたよりも痛みが大きかった竜が、今度こそうめいて動きを止める。
滑るように刀を逆手に持ち替えた凪は鮮血したたる鈍色の切っ先を翼の付け根に狙うも、視界の外から迫る気配に回避を選択せざるを得なかった。
刃が傷を刻むと同時に毒塊は爆発、3頭目が側杖を食って飲み込まれる。生体ゆえに毒耐性の高いギギネブラだが、傷口から入った毒ガスによって毒を浴びたようだ。
しかし凪はそれを見届ける暇もなく、着地してすぐ前転。数瞬前まで彼の足のあった地は1頭目の首に喰われた。
ガリガリガリッ...!
凍土を削る音と共に上からぶら下がった4頭目が、凪の足をすくうようにして捕食しようとした。一瞬よりさらに短い時間でそれを判断した凪は、灼熱を秘める太刀を凍土に刺し躊躇いなくその柄を蹴ることで、天盤からぶら下がる4頭目の口に手を届かす。全身をくねらせた竜の首は、獲物の足の下をからぶった。
腰から引き抜いた剥ぎ取りナイフを天盤に張り付く尻尾の口に水平に入れた。いくらか筋肉を縦に断裂させながら深く突き刺さったそれは、口と天盤の間に空気を入れる羽目となり、無様な叫び声とともに4頭目は地面に墜落。空中で半回転した凪は天盤を蹴ることで着地点を操作する。
ギョアアア!
同族の下敷きにされた3頭目の2度斬られた背中の皮が、4頭目の重みに引き攣れて新たな血を流した。
柔らかく膝を使って着地した凪は刺さったままの太刀を抜く暇もなく2頭目の首ふり攻撃を飛びずさって避ける。横を駆け抜けて愛刀を手にすると、近寄ってきた1頭目の頭に気を込めながら深く貫く。
ギョエエアアアア!!!!
炎に脳を焼いた、と感じるが早いか太刀を引き抜き、バック転で1頭目の痛みで狂ったように暴走する頭を避ける。そのまま刀を入れたままだったら刃が折れていたかもしれなかったと、痺れが残る手を軽く振りながら冷や汗をかいた。
近寄れない1頭目は放っておくことにし、次なる狙いを4頭目に定める。
ひっくり返ってまだもがいているその腹に乗り、妖しく光る紫の毒腺に刀は跳ねるような動きで連続斬り。5太刀目で断ち切れたそれはびくびくと動きながら毒を垂れ流す。
そのままじたばた暴れる4頭目の下から這いずり出てきた3頭目の頭は、両手に持って振り下ろされた飛竜刀【銀】の餌食となる。深く斬られた傷口は、今日何度目かの悲鳴をギギネブラに与えた。
ギャア
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