5 「血華葬」
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凪お兄様はただうなずいて、左手―――利き手と逆の手で太刀を持ち上げました。それだけでも反対側の腕に負担がかかって、顔をしかめるくらいだったのに、無理して無表情を作って。……その一部始終が見れたのは、その中で唯一お兄様を見上げていた、私だけです。
「その時お兄様が小さく言ったんです。うつむきながら言ったから、背の低かった私だけが聞こえたんだと思います。……『反対の手でも太刀が振るえるようにしておけばよかったな』って。『いつ使えなくなるか分からないから』って……。…何でもないこと、のように……さも当たり前のことを、なぜ今まで思いつかなかったのか、と自分にあきれるように……!」
お兄様のまだ癒えていない怪我は右腕だけではありませんでしたが、それでも凪お兄様は太刀を引きずってポッケ村の入り口へと行きました。
そして……
カチッ
ゴォーン…ゴォーン…ゴォーン…
「あ、12時……」
「……お昼ね。おなかもすいたし、丁度いいわ。続きはまたあとにしましょう。あたしちょっとお昼の準備するから、ユキ、お料理できるなら手伝ってくれる?」
「…わかりました。手、洗ってきますね」
「わたしは?」
「あんたはー…………ええと…テ、テーブル拭いておいてくれると助かるわ」
「なにそれー!」
「あんたは片づけ要員! テーブル拭かないと食べさせないから!」
「ちぇっ。片づけしない女は嫌われるぞー、ナギさんに」
「なっ、なんで今ここにナギの名前が出てくるのよ! あんたこそ、料理一つできない女があの料理上手なナギに好かれると思ったら、大間違いなんだから!」
バチバチと火花を散らしてにらみ合うこと数秒。
別段味覚が人とずれているというわけでもなく、普段の調合や肉の丸焼きだって問題ない、料理人の娘であるにも関わらずその“料理”だけは壊滅的にできないリーゼロッテと、片づけをしようとするとなぜか余計荷物が散らばる“ポルターガイスト”の(実に不名誉な)異名を(陰で)持つエリザ。
ベクトルは違えど2人の理想とする女性像の中では決定的にやらかしてはいけないポイントを押さえてしまった2人の熾烈な戦いは、結果、両者敗退となった。
「………おりょうり」
「………おかたづけ」
がくーん…
沈んだ2人の横、水で濡らした台拭きをもってやってきた雪路が食べ終わった小皿を重ねてさっとテーブルを拭く。濡れていない方の布の面をだして2度拭きを終えると、洗い物を器用に持ってそのまま勝手知ったるヴェローナ家のキッチンへと姿を消した。水を鍋に張り火を点けて、まな板を包丁が叩く規則正しいリズムが凍り付いた2人の少女の耳に届く。
かつてない衝撃に、2人の美少女ハンターは戦慄した。
そんな2人をあざ笑うかのごとく響く、包丁と、澄んだ鼻歌。こ
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