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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
5 「血華葬」
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ちてきたが……)

 食事はしないのだろうか。それとも、凪を喰らうと心に決めてでもいるのか。
 なんとも光栄なことで。せめてシャーベットでなく一撃で綺麗にぽっくりと()ってほしい。
 思わずそんなことを頭の隅で考える程度には、凪もこの命懸けの鬼ごっこに飽き飽きしていた。

「ルイーズ……」

 自分の肩を勝手に定位置にしてしまったあのおしゃべり好きなメラルーは、いつも痒い所に手が届くサポートをしてくれる。彼女がいないことも凪の疲労が大きいことの一因かもしれない。
 思わずつぶやいた愛猫の名前を頭から飛ばすと、無心になって宙に跳んだ。
 草履の下すれすれを掠めていくギギネブラの尻尾。普段より余裕が無いのは、やはり足に乳酸が溜まってきているからか。それが通り過ぎるのを待ってくれることもなく、空中で満足な身動きもとれない凪へ2頭目の毒弾が放たれた。
 衝撃を受けるまではゲル状を保つ性質がある毒の塊を太刀の細い腹を滑らせるようにして受けて、絶妙な力加減でネブラに打ち返す。力が強すぎればゲルが気化して毒を浴び、弱すぎれば下に落ちて結局自分が毒を浴びるその技は、今日初めてギギネブラと戦ったという者が出せるものではない。
 自分の毒を受けたギギネブラが一歩後ろに後退した、それよりわずかに早く3頭目が着地スレスレの凪をねらって突進する。
 大きく開いた丸い口が凪の手の指先に届くまでコンマ5秒。片足のつま先が凍土についた瞬間、もう片方の足をぐるんと蹴り上げる遠心力も利用しながら指の力だけで再び上に跳び上がった。空中でさらに一回転しながら3頭目の背中に一文字に傷跡をつける。右翼のすぐ右に着地したと同時に振り向いて、その翼の間接を1箇所、太刀の石突きが穿った。

バキッ...!

 瞬間的に力を入れられた骨は、鈍い音と感触でもって砕けたことを凪に伝えた。
 竜が痛みによろめく。が、当然この程度ではそれほどのダメージなど与えられていない。そんなことは百も承知。それでも僅かな足止めとなれば、次撃を確実に決められる。
 追撃しようとしたところに4頭目の影が上から落ちた。凪が視線を一瞬上に向けたその隙に、1頭目は凪の真後ろに毒塊を産み付ける。2頭目もほぼ同時に毒弾をふたたび凪の背中に撃った。

ひゅっ

「チッ!」

 舌打ちを禁じ得ない。
 さしもの凪も飛竜と1対4で戦った経験など無い。先ほどから、ついつい1頭に集中してしまってはその隙を他の3頭に狙われてばかりだった。そのストレスも加えて疲労に積み重なってきているのは自覚している。
 2振りの太刀でもって手数で圧倒し、怒涛の勢いで命を狩りに行くのが凪のスタイルだ。いわば短期決戦型である彼は、こうやってちまちまとダメージを与えていくというやり方にどうも違和感があって集中しきれな
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