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SAO−銀ノ月−
第六十四話
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ること。

「……行くわよ、レコン!」

 とは言っても、戦闘職ではないあたしの実力は心得ているし、レコンもどちらかというとサポートタイプ。無理はしない……というか、出来ないというべきか。

「う、うん……」

 やはり自信なさげな声だったものの、レコンからも一応の返答が来て、二人でカヤックを進行方向から、ウンディーネがいる方向に反転させる。……カヤックの経験など無いので、反転するだけで、あたしもレコンもおっかなびっくりだったけれど。

 そして、片手にカヤックのオール、もう片手にショウキの《銀ノ月》のついでに作ったメイスを構えると、ウンディーネの襲来に水底を見る。あたしたちに極力バレないように、きっと水底を歩くように来ているはずだ。

「いた……!」

 狙い通り、水底を這うように泳ぐウンディーネが一人こちらに向かって来ている。悔しいけれど、あたしには遠距離攻撃手段がなく、ここはレコンの魔法に任せようとしたところ――

「……リズちゃん、右にいる!」

 ――レコンの叫び声が響き渡り、あたしはつられるように右を見ると、水面に、カヤックへと手をかけようとしているウンディーネの姿が映る。反射的に、メイスがその手に向かって振り下ろされたものの、手応えは水を殴った時のようなドボンという感覚。

 さらに、カヤックの上でメイスによる攻撃を仕掛けたことにより、バランスが崩れたあたしの船に、正面から来ていたウンディーネが接近する。その動きは、この世界に来たばかりのあたしたちとは違う、熟練した技を感じさせた。

「リズちゃん、どいて!」

 しゃがんだあたしの頭の上を、レコンの魔法が通り過ぎる。後ろからのレコンのカマイタチのような風魔法が、正面にいるウンディーネを襲い、なんとか事なきを得る。

 二人のウンディーネは一旦は距離を取り、あたしのカヤックから少し離れた場所で優雅に泳いでいる。その動きはいつでもこちらを倒せる、という自信の現れのように感じられた。

「ぐぬぬ……ムカつくわね……」

 かと言っても対応策があるわけではなく。オールでカヤックのバランスを取りつつ、早くこの河の終わりまで行き着く事を祈るしかない。……たとえ、そんなのが性分にあっていなくとも。

「…………?」

 しかし、河から離れてしまえば、ウンディーネたちの有利な状況は五分五分になる。正確にはあちらの方がベテランな分、ウンディーネたちの方が有利だろうが、あたしたちが――レコンはベテランらしいけど――入ってすぐなのを相手が知っている筈がない。

 よって、待機することには全くメリットが無いにもかかわらず、彼らはこちらに攻撃を仕掛けようとはしていない。河の中に入って、こちらの様子を伺って、レコンの魔法攻撃を軽くあしらっているだけだ
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