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打球は快音響かせて
高校一年
第九話 冬は蛹になる時期
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の野球部員はだいたい、小学校の時からそんな「つまらない冬」を過ごしてきたヤツばかりなのである。

「1分!1、2、3、4…」
「ハァッハァッハァッ」
「死ぬ…」

みんな大好き、タイム走レベテーションは、個人のベストタイムが計られ、そこからどれだけ落ちたらアウト、という基準が設けられている。チーム一律の基準だと、速いヤツが追い込まれない。だから、個人のベストタイムに合わせるのだ。飾磨にとっては多少気は楽かもしれないが、しかしそれでも手は抜けない。タイム走だけでなく、普通の長距離走も、ビーチフラッグスなど短距離走も、ハードル走もあり、走り込みのメニューは次から次へと新しいものが出てくる。野球のユニフォームを着てるだけで、さながら陸上部である。

そうして持久力をつける走り込みが続いてから、12月に入ってからはラダーや守備のステップドリルなど、体の使い方の練習が入ってくる。ハードルくぐりなど、柔軟性と強さが問われるようなメニューもあり、11月に鍛えた持久力を元手にトレーニングを積んでいく。

そうしたトレーニングと並行して、ウェートトレーニングも始まる。基本となるのはブルガリアン=スクワットやカーフレイズ、重厚な下半身を目指して鍛える。上半身は肩周りを鍛え過ぎないよう、リストカールやラットプルが主になる。

身体を鍛えても、それだけでは体は出来あがらない。身体を作るのには必ず材料が要るのだ。練習中にマネージャーがご飯を炊き、メニューの合間に栄養補給としてゴマ塩や海苔、ふりかけなどで丼を平らげる。練習後にライフパックを飲み、就寝前のプロテインも義務付けられる。特に寮生は浅海の監視のもと、食事の量も監視されるのだ。
水面地区で中堅校の立場を得るだけでも、これだけの取り組みが必要なのである。むしろ、これだけしないと、上位校との差は開く一方なのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーー


「パカン!パカン!」

竹バットの音が響き、打球が丸ネットに突き刺さる。ジャージ姿に、若干の汗が滲んでいた。

「打球、強くなってきたね」
「おお!お陰さまでの!ちょいと手応えも出てきよったわ!」

翼のトスを打つのは、1年生の外野手、太田桂吾。少し丸い身体をしているが、飾磨のような天然のデブではなく、意識的に食べて作った体型らしい。浅海に指導されるまでもなく「食トレ」を実践するあたり真面目さが伺える。実際、自宅生だったのが夏休み明けからは親に頼み込んで寮生活に切り替え、特待生を横目で見ながら、翼と就寝前の練習に明け暮れていた。

「秋はベンチ入れなんだけど、これならイケるかねぇ!」
「さぁ、外野の先輩も多いしなぁ。でも1年の中では良い線いってるでしょ、今でも」
「それじゃダメやろー。春に入ってくる1年の特待生は外野かもし
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