第三章
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す」
「目がですか」
「はい、病気で」
富子は沈んだ声でそう答えてきた。
「見えなくなったのです。三歳の時から」
「そうだったのですか」
赤龍はそれを聞いて納得したように頷いた。だから今も手をじっと握って離さないのだとわかった。これは母親だからであったのだ。娘を気遣う親心であったのだ。
「それでですね」
富子はさらに言ってきた。
「今度手術することになりまして」
「手術をですか」
「そうなのです。けれど娘が怖がりまして」
富子は語る。語りながら赤龍に顔を向けてきた。よく見れば母娘であるとよくわからせるものであった。その顔立ちがよく似ていた。だがやはり違うものがあった。それが目なのであった。悲しいことに。
「それで。娘が赤龍関のファンでしたので。こうして勇気付けてもらおうと思いまして」
「そういうことでしたか」
「はい」
富子は赤龍の言葉に応えた。その返事には何の曇ったものもなかった。
「宜しいでしょうか」
「勿論です」
赤龍は迷うことなくその申し出を快諾してきた。太く低い声で答えてきた。
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