第三章
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「流石は横綱だけはあるな」
「はい」
「妖怪でも怪人でもな。力士は邪気を追い払うのがそもそもの仕事だしな」
「ええ」
土俵で四股を踏むのはこうした理由からである。
「まあそれは実際に来たらだ」
「ですね」
そもそも来たら怖いというレベルではないのであるがそれは話には出なかった。
「じゃあ誰が来るかだな」
「その筋だったらお引取りってことですね」
「うむ」
付き人に話したのと変わらない話をしながら待っていた。すると付き人がある若い女の人と小さな女の子を連れて部屋に戻って来た。女の子の歳は六歳か七歳といったところであろうか。赤い服を着ている。可愛らしい顔立ちだがどういうわけか動きも頼りなく目も焦点が合っていない感じであった。
「はじめまして」
見れば長い黒髪を上で束ねている。若いことは若いのだがどうにもくたびれた感じがする。服も全体的に地味で目立たない印象だ。女の子の手を強く握っているのが目につく。
「赤龍関さんですよね」
「はい」
赤龍はその女性の言葉に応えた。
「そうですけれど」
「そうなのですか」
赤龍は女性がその言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろしていることに気付いた。だがそれはあえて口には出さず彼女の言葉を待っていた。
「それで私に何の御用でしょうか」
赤龍はその女性に問う。
「よかったら教えて下さい」
「宜しいですか」
「はい」
女性の言葉を受け入れて頷く。
「どうぞ」
「わかりました。では」
「まあお座り下さい」
親方も彼女に声をかける。見ればまだ立っていた。
「ゆっくりとお話しましょう」
「ええ。さあ美香子」
手を握っている少女に声をかけてきた。
「座りましょう」
「わかったわ」
少女はそれに頷く。そして女性に言われるまま座ろうとする。彼女もそれを見て座るのであった。
「ではお話下さい」
親方が穏やかな声であらためて彼女に声をかけた。
「どういった御用件でしょうか」
「ええ」
女性はそれを受けて口を開きはじめた。二人は正座していた。
「まずは私の名前ですが」
「はい」
赤龍も親方もまずは名前を聞いた。
「棟方富子と申します」
「棟方さんですか」
「はい、主人は銀行員でして」
「成程」
ここまでは普通の話であった。何も変わったところはない。
「そしてこれが娘の美香子です」
富子はそう言って少女を紹介した。その間もずっと手を握って話さない。
「娘さんでしたか」
「はい。実は今日はその娘のことでお願いがあってお邪魔させて頂きました」
「ふむ」
親方はそれを聞いて考える目を見せてきた。
「左様でしたか」
「そうなのです。娘は」
「どうされたのですか?」
今度は赤龍が彼女に尋ねる。
「目が見えないので
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