第二章
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うことだってな。できるんだ」
「ちょっとそれは」
赤龍はその言葉にはその怖い顔を顰めさせて親方に応えた。
「ないんじゃ。俺は力士ですよ」
「何言ってるんだ」
だが親方はそう言った赤龍にかえってこう言い返した。
「力士だからなんだよ」
「闘うしか出来ないじゃないですか」
「あのな」
親方はさらに言う。
「力士は何だ?」
そして赤龍に問うてきた。
「何だって言われましても」
「神主さんの親戚みたいなものだろうが」
「ええ、まあ」
流石に横綱でそれを知らないわけがなかった。だがそれに対する赤龍と親方の考えが違っているだけである。
「だからだよ」
「神様にお仕えしてるってわけですか」
「そういうことだ。じゃあできるな」
「そうですかね」
「特に御前みたいな力士はな」
親方の声はさらに強いものになってきていた。
「できる。安心しろ」
「だといいですけれどね」
今回ばかりはどうにも親方の声が信じられなかった。これは無理もないことであった。
「俺みたいなのが人を助けることができれば」
ふと自分の顔のことを考える。この顔のせいで昔から怖がられてきている。天下無双の横綱も自分の顔のことはどうしようもなかったのである。
親方の言葉が頭の中に残るが彼は稽古と勝負に明け暮れていた。稽古には実に熱心で土俵での勝負では常に勝ち続けた。まさに鬼神の如くであった。
実際に彼は鬼とも呼ばれていた。その根拠はやはりその顔である。顔があまりにも怖いのでそう言われるのだ。子供の頃からなのでもう慣れてはいるがやはり気分のいいものではなかった。
「赤龍、また勝ったな!」
「鬼みたいな強さだったな、今日も!」
土俵を降りて花道を進む彼にこう声がかかる。これもまた彼に対する声援であった。
「あの、横綱」
その中で付き人の一人が彼に声をかけてきた。
「どうした?」
「あのですね」
彼は花道から出た赤龍にそっと囁きかける。赤龍もそれを聞く。
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