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覇王と修羅王
自称王と他称王
九話
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ェは苦笑いしながらアインハルトを見ると、目を白黒させていた。

「あ〜……とりあえずアインハルト、覇王の悲願はもういいのか? 覇王流もやめるのか?」
「え、あ、はい……それは……」

 ノーヴェの問いで我に返ったアインハルトは答えようとするが、言葉が続かない。
 ただ、苦悶する様子は内心をよく表していて、ノーヴェは勿論こと、アレクでさえ分かってしまい、漸く出た言葉は諦めとも未練とも受け取れた。

「私は……私は、敗者です」

 そう言ったアインハルトの視線を受けるアレクは、他三人の視線も集めている事に気付き、頬が引き攣った。
 スバルはなんとかしてほしそうな顔。ノーヴェはスバル程に露骨に表して無いが、同様の様子。ティアナは意外にもただ見ているといった感じだが、何を考えているのか全く分からないので逆に怖い。
 そして、アインハルトは不安やら何やらが籠もる上目使いで、泣く事も出来ない子猫のよう……。

「ちょちょちょいタイムッ!」

 アレクは背を向け、四つん這いで部屋の端に逃げて行く。視界に入らなければ視線に流される事も、アインハルトのギャップにやられる事も無い。
 先ず、自由が良い。だから王の事や、ついでに周りも自分に関わらないようにしたい。
 よってアインハルトは、周りを妨害する壁役が最適。よし、これで行こう――

「アレク。何を考えてるか知らないけど、警防署や管理局に出頭しないようにしなさい?」

 ――と思ったけど、下手すれば人権迫害扱いな上にアインハルトが何かやらかしたら共犯者扱いなので即却下。
 此処には執務官が居るのだ。それも人のキー盗んで複製した事をものともせず自由を迫害する危険ランクSオーバーの執務官が、だ。下手な事言えばお縄になる。……正直、もう執務官が居るってだけで詰んでる気がするけど。
 でも、せめて王の事だけでも、追い駆けられるような事態は避けたい。これくらいは大丈夫……な筈。
 不安度合が増えた視線の中、アレクはまた四つん這いで戻って行く。

「決まったかしら?」
「……アレディ・ナアシュとか言って、どこぞの王様と見做して追っ掛けて来なければもう好きにしていいっす」

 アレクは窺うように見渡すと重圧を感じる様な視線は無くなったが、ティアナは及第点気味である。
 何か不味かったか、とアレクが首を傾げていると、ポツリとティアナは言った。

「アインハルトを此処に置いても良いのね?」
「あ」

 完全に忘れていた。ついでに、度重なる襲撃に加え未だ物を把握しきれてないので、此処が自分の部屋という事も忘れていた。なので、勝手に入られる事も、荷物を持っている事すらも大して疑問に思わなかった。
 アレクは慌てて取り繕うとするが、こんな時にフェルヴィスの一言が頭を過ぎる。男
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