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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十一話 解放の時
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程自治領主府を制圧したと報告があったがボルテック自治領主はどうなったのかな?」
ヴァレンシュタインがこちらに視線を向けた。冷たい視線だった。
『……死んだでしょうね、生きていれば彼の方から連絡を入れて来るはずです』
「……」
『我々が貴族連合軍に奇襲をかけた時点で貴族達はボルテックが我々に通じたと判断したのだと思います。生かしておけば利用出来たものを……、逆上して殺したのでしょう』
淡々としている、他人事の様だ。その口調に心がささくれだった。そこまで追い込んだのはお前だろう。
「全て思い通りかね、中将」
私の皮肉にもヴァレンシュタインは何の反応も示さなかった。いや、口元に笑みが浮かんでいる。ゾッとする様な冷やかさだ。だからお前は皆に怖がられるのだ。少しは傷付いたような表情を見せれば良いのに……。
『地上制圧が遅れている事を除けば想定内ですね』
ヴァレンシュタインは否定しなかった。皆が顔を見合わせその殆どが引き攣ったような表情をしている。それを見てヴァレンシュタインは苦笑を浮かべた。
『哀れだと思いますよ。地球教の正体を皆に知られた以上フェザーンの自治領主になるのは危険でした。その事に彼が気付かなかったとは思えません。ですが彼以外に適任者が居なかったのも事実です。已むを得ずに引き受けたのでしょう』
『地球教と手を切ったというのも事実かもしれません。しかしどうせなら彼の手で地球教を叩き潰すぐらいの事をすべきでした。そして新たなフェザーンを彼の手で創り上げるべきだった。そうであれば彼も、新たなフェザーンも生き残れたかもしれない。……中途半端でしたね、おかげでこちらが後始末をする事になる』
中途半端か……。フェザーンに貴族連合軍を誘引したのはヴァレンシュタインだった。理由の一つがフェザーンを叩き潰す必要が有るからという物だった。哀れだと言ったのもボルテックの動き次第では生き残れたかもしれないと言ったのも本心かもしれない。或いは嘆きか? 何故そこまで遣らないのか? 何故自分に遣らせるのか? 最後は遣る瀬無さそうな口調だった。
女性士官が“提督”と声をかけてからヴァレンシュタインの耳元で何事か囁いている。ヴァレンシュタインが頷いた。
『今ローゼンリッターから報告が有りました。ボルテック自治領主の遺体を確認したそうです。射殺されたようですね』
「……」
誰かが溜息を吐いた。
その後もスクリーンからは引っ切り無しに戦況報告と命令指示の遣り取りが聞こえた。戦況は有利だ、しかし何処か喜びに浸り切れない。なんとなく皆が顔を見合わせあい居心地の悪い時間が過ぎていく。
『第一、第二、第三艦隊が貴族連合軍の後方を完全に遮断! 包囲網が完成しました!』
流石に会議室に歓声が沸いた。スクリーンからも歓声が上がっている。
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