暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校一年
第八話 負けてから
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割に胸は大きい。
宮園の隣に居てウキウキ上機嫌なのは、入学の日に宮園にアドレスを聞いた、あの青野だった。

「あ〜」
「見せつけてくるっちゃね〜」

山崎も大江も、2人を見つけて声を上げる。
文化祭を2人で回るとは、何ともベタで、そしてベタな故に小憎らしい。

(あれ、つい最近まではメールを返すのも面倒くさいって言ってたのに…)

子どものようにはしゃぐ青野に、微笑みをもって対応している宮園の姿は翼にとっては意外なモノだった。宮園は元々愛想良く対応してはいるが、基本的に「女はダルい」と思ってる節があり、特に青野のような頭の中がお花畑のようなのは嫌いだと言っていた。それが今は一緒に人前に2人の関係を晒すまでになっている。一体、いつから考えが変わったのだろう?

(…あの負け……?)

頭をよぎったのは、つい最近の秋季大会の敗戦だった。まさか、あれで野球への熱意が冷めて、適当に女に現を抜かし始めた…?

(いや、そんな考えはいけない。さすがに宮園だって、そこまで人の思いを適当に扱ったりはしないだろ。)

翼は自分の考えを否定した。
青野がニコニコ笑って、宮園と手を組みたがる。宮園は少し照れたが、やがて苦笑いしながら青野に合わせてあげた。
青野は本当に嬉しそうだった。



ーーーーーーーーーーーーーー



「うぉおおおおお」

鷹合は学校の外にある坂道を声を上げながら走り込んでいた。鷹合の野球人生で11点も取られたのは初めてだっただろうが、しかしそこは鷹合、持ち前のメンタリティで、立ち直りも早い。
そして今、走り込んでいる訳である。
ただ、帝王大戦はコントロールが悪かった→コントロールが悪いのは下半身が弱いから→だから走りこむ
という事だが、本当を言うと鷹合は脚力もチームトップクラスで下半身が弱い訳ではなく、原因はもっと他の所にありそうなのだが……

バシィッ!

ブルペンでは美濃部がキレの良い球をブルペン捕手のミットに叩き込んでいた。小柄ながらその投球は小気味良く、中学時代に日麻脇地区という田舎とはいえ、ベスト4に残った投手だけはある。鷹合に次ぐ2番手投手の立ち位置は既に先輩を抑えて確保した感がある。もちろん、本人は「2番手」などに納得などしていない。

(鷹合はあの体たらくやけ、負けてるなんざ思わんわい。見てろや、春に投げとるのは俺や!)
バシィッ!

美濃部の滾る思いを乗せ、そのボールは更に加速する。

翼はと言えば、相も変わらず、地道に投球フォームを固めていた。浅海の指導ポイントを意識して、丁寧にかつ数を投げる。ネットスローも、ただ丸ネットに放り込むのではなく、目標を定め、球筋をイメージして左腕を振る。

(少なくとも、最後の学年では、メンバーには入らなくちゃ
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