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戦国異伝
第百五十七話 延暦寺その十二

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「しかし何百かある」
「やけに多いですな」
「思ったよりも」
「おかしいのう」
 首を傾げさせてだ、信長は言う。
「これは」
「ですな、確かに」
「この状況は」
「鉄砲が多過ぎます」
「しかも闇の法衣の僧兵達も多いですが」
「あの者達じゃな」
 ここでだ、信長はその闇の法衣の僧侶達についても言った。
「そっくりだと思わぬか」
「本願寺ですか」
「一向宗の時と」
「本願寺と延暦寺では全く違う」
 同じ仏門にあるが宗派が違う。宗派が違えば何から何まで違う。
 しかしだ、今信長が見ているその者達はというと。
「しかし同じじゃ」
「僧兵であってもですな」
「衣の色が」
「それに戦の仕方も」
「妙なまでに」
「個々で戦っておる」
 信長はこのことも言った。
「陣で戦わずな」
「個々では強いですがそれでもですな」
「陣では戦っていません」
「鉄砲が多く武器もよいですが」
「それでも」
「うむ、やはり本願寺と同じじゃ」
 それでだというのだ。
「黒、いや闇の服はのう」
「しかもその本願寺ですが」
 林が信長にいぶかしみながら言ってきた。
「やはり」
「本願寺の色は灰色じゃな」
「それは変わらぬ様です」
「そして延暦寺はこれといって色を定めておらぬ」
 延暦寺にそうした考えはない。
「ではな」
「あの者達は」
「何処からか来て雇われた者か」
「近江にもいましたからな」
 闇の服の者達はだ、見れば僧兵達だけでなく女や子供もいてそうした者達も武器を手に織田家の軍勢に向かって来る。信長はそうした女や子供についてはこう言うのだった。
「武器を持っているのならな」
「女子供であってもですな」
「容赦してはならん」
 万見に対しての言葉だ。
「よいな」
「畏まりました」
「武器を持たぬ者は攻めぬが武器を持っておるなら別じゃ」
 これが信長の考えだ、武器を持っている相手には容赦しないのだ。例えそれが老人であろうとも女子供であろうともだ。
 だからだ、今もそうした者達に対して攻めよというのだ。
「よいな」
「ではその様に」
「攻めて来た者達を撃ち槍で突くのじゃ」
 これが織田家の今の攻めである。
「火も点けてな」
「そうして敵の数を減らし」
「そうして」
「敵の数が減ったところで一気に攻め潰せ」
 そうしろと言ってだ、そのうえで。
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