第二章
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第二章
「私はね。身体にいいものばかり食べてるのよ」
「その自然食ですよね」
「そうしたものを」
「痛風や糖尿病にも気をつけているのよ」
それでビールも飲まず肉も甘いものも食べない。食べ物に砂糖も入れない。そして栗田はこんなことも話すのであった。
「しかもね」
「しかも?」
「しかもっていいますと」
「癌にも気をつけてるから」
それにもというのだ。
「そうしたことが言われてる食べ物は絶対に食べないから」
「じゃあ病気とかは」
「ないんですね」
「有り得ないわ」
何か、取り憑かれた様な言葉だった。
「絶対にね」
「それじゃあ一体」
「それだけ疲れて見えるのは」
「どうしてなんでしょうか」
「だから何ともないわよ」
本人はこう言うのだった。
「気にしないでいいわよ、いいわね」
「ええ、わかりました」
「そこまで言うんなら」
「それなら」
周囲も彼女のその意固地な感じにこう返すしかなかった。ここで言えばまた全否定されるのがわかっていたからだ。それでだった。
だが栗田の顔はその色を次第に悪くさせていきしまいには完全に土色になった。身体も痩せ衰え目がさらに飛び出て異様な有様になった。
そんな彼女を見てだ。周囲はひそひそと話すのだった。
「やっぱりな」
「そうだよな」
「あれってやっぱり」
「おかしいよな」
彼女の異変にだ。気付かない筈もなかった。
「けれど栗田さんそれを頑として認めないし」
「自分は健康だって言い張るし」
「身体にいいものばかり食べてるからって」
「そう言うしな」
「言ってもなあ」
それが問題なのだった。まさに言ってもであったのだ。
「だからなあ」
「どうなるんだろうな、あの人」
「あれってどう見ても命が危ないよな」
「髪の毛だって艶が完全に消えてぱさぱさになってきていて」
「肌もがさがさでな」
「どんどん痩せていってて」
そんな状況になっているのだった。とにかく酷い有様なのだ。
「身体を動かすのもおっくうな感じだけれど」
「いいのかね、あれで」
「本人はああ言ってるけれど」
周囲はこう言うだけしかできなくなっていた。とにかく栗田はかなり危険な状況にあった。しかし本人はこのことをあくまで認めずだった。
会社は遂に入院を勧めた。しかし彼女はこれにも言い返すのだった。
「大丈夫です」
「いや、しかし君はどう見ても」
それを告げた部長もはねつけられて困惑してしまった。
「危ないよ、このままでは」
「そんな筈がありません」
まだ言う彼女だった。
「私はそれに一番気を使ってるのですから」
「そう言うのかい?」
「はい、ですから大丈夫です」
また言う彼女だった。
「実際に今こうして会社にも出ているではありま
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