第百五十七話 延暦寺その十
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「だからじゃ」
「鉄砲を使うこともまた」
「当然ですか」
「うむ」
「数は数百程かと」
「結構多いですな」
その鉄砲の数も話される。
「これでは迂闊に進めませぬ」
「ではここは」
「火じゃ」
それで焼けというのだ。
「ではよいな」
「わかりました、それでは」
「今は」
織田の軍勢は今は攻めるよりは焼く方を選んだ、そして実際に。
僧兵達は戦うが退けられ焼かれていく、しかしその中でも杉谷と無明だけは平然としていた、それでだった。
今度は闇の衣の僧兵達、何処からか出て来た彼等にこう言うのだった。
「ではよいな」
「今からな」
延暦寺の者達に話していた時とは違い強い口調で話す。
「戦うぞ」
「ここでもな」
こう彼等に告げるのだった。
「よいな、それでは」
「存分に戦うぞ」
「越前、加賀に続いてですな」
「この国でもそうしますか」
その闇の衣の僧兵達も応える。
「では力を振るい」
「戦を楽しむのですな」
「織田家にはまだ本願寺を倒させぬ」
「その為にじゃ」
「ここでより疲れてもらう」
「石山を攻められぬまでにな」
そこまで疲れてもらうというのだ、織田家に。
「精々紀伊までじゃ」
「石山だけは陥ちさせぬ」
「まだな」
「石山さえあればよい」
「だからじゃ」
「よいな、今は」
杉谷と無明も言う、そしてだった。
二人はその僧兵達も前に出す、自らも鉄砲や杖を手にしてそれに加わる、杉谷はこの時に無明に問われた。
「ここでもですか」
「左様、隙があれば」
その時にとだ、杉谷は鉄砲を手にして言う。
「織田信長を撃つ」
「そうされますか」
「仕留めてもよかったな」
「はい、長老が仰るには」
「ならばな」
それならというのだ、杉谷もまた。
「仕留める」
「そう出来ればいいですな」
「もっとも相手もそれはわかっておるであろう」
信長も杉谷がいることはというのだ。
「だからな」
「そうそう容易には仕留められませぬか」
「あくまで出来ればじゃ」
そういう考えだった、今の杉谷は。
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