第一章
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第一章
自然食
栗田留美子はだ。食事に異常なまでのこだわりを持っていた。何かというとだ。
「それ農薬ついてるから駄目」
「これ何よ、有機農法じゃないわよね」
「ハウス栽培なんて外道よ」
「牛乳もゆっくりと殺菌しないと栄養が殺されるのよ」
「全然駄目。大企業の作ったお醤油はね」
ある漫画を読んでだ。いつもこう言うのだった。
それで自然食にこだわりやたらと凝った牛乳を飲み醤油を使っていた。それは家でも会社でも同じだった。
「栗田さんまたですか」
「自然食のお弁当なんですね」
「それ好きですね」
「あのね、農薬とかそんなの使ったお料理なんて駄目に決まってるでしょ」
痩せて飛び出た目の顔である。そしてその飛び出た目が異様な光を放っている。
水蟷螂を思わせる顔である。しかも唇が先に出ている。髪は少し長くさせてパーマにしている。全体的に険のある、何かに飛び掛るような顔である。
「農薬は身体に悪いのよ」
「まあ確かにそうですけれど」
「全部有機農法のお野菜ですか」
「それにお米も」
「全部そうなんですね」
「健康は全て食にありよ」
こう言うのであった。見れば人参を煮たものにゆで卵にホウレンソウの浸し、それとミニトマトといったおかずに白米だ。メニュー自体は平凡である。
「だからこれは当然よ」
「じゃあインスタントラーメンとかは」
「レトルト食品は」
「あんなの食べ物じゃないわ」
断言だった。
「どちらもね」
「それじゃあ食べないんですね」
「やっぱり」
「そうよ。絶対に食べないわ」
また言う彼女だった。
「何があってもね。コンビニのお弁当も」
そうしたものもだというのだ。
「絶対に食べないわ。そうそう」
「そうそう?」
「といいますと?」
「この本読んでるのよ」
出してきたのは以前話題になったあれを買ってはいけない、これを買ってはいけないと書いてある本だった。もっともその本はその書かれている内容のあまりもの杜撰さと出鱈目さで集中的な批判を受けた代物だ。
その本を連載していた出版社もこれまたかなり問題のある出版社として有名であった。その本を得意げに出してきて話すのだった。
「それで勉強してね」
「それでなんですか」
「自然食だけじゃなくて」
「食事全体にも注意しているんですね」
「そうよ、そういうことよ」
険のある目で話すのだった。
「何があってもね。健康の為よ」
「ううん、極端過ぎる様な」
「そうよね」
「そこまでいったら」
「やっぱり」
「健康に悪いものなんて食べられないわよ」
しかし栗田の言葉は変わらない。
「文明とか科学とかが食事を歪にさせたのよ」
「まあそういう考えもありますけれ
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