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ドリトル先生と京都の狐
第三幕その十二

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 観光旅行に戻ろうと言います、ですが。
 ここで、です。不意にお年寄りの声が聞こえてきました。
「事情は聞いたぞ」
「えっ、そのお声は」
「まさか」
 その声を聞いてです、狐の母娘はびっくりして飛び上がってしまいました。
 そうしてです、その場で畏まって、お母さん狐はお布団の中でそうして言うのでした。
「安倍様」
「安倍様ですね」
「左様」
 まさにです、そうだと声は二人に答えました。
「久しいな」
「お聞きになられていたとは」
「そうでしたか」
「わしは京都のあらゆる狐をいつも見守っておるのじゃよ」
 それでだというのです。
「そなた達のこともな」
「では私の病のことも」
「気にかけておった、それで御主達が言ってきたらな」
 その時はというのです。
「力を貸すつもりでおった」
「左様でしたから」
「若しくは病が今以上に進んだ時にな」
 その時にもだというのです。
「そう思っていたが」
「そうでしたか」
「そうじゃ、それでじゃが」
 その九尾の狐、安倍晴正はこう言うのでした。
「ドリトル先生じゃな」
「はい」
 今度は先生に声をかけてきました、先生も応えます。
「そうです」
「さて、今からそちらに戻ってじゃ」
 それでだというのです。
「先生にお話しようぞ」
「えっ、ですが」 
 九尾の狐の言葉を聞いてです、先生は驚いた顔で言葉を返します。
「長老さんは」
「ほっほっほ、わしは長老じゃな」
「そうではないのですか?」
「その通りじゃよ。わしは長老じゃよ」
 実際にそうだと答えた九尾の狐でした。
「京都の狐達のな」
「そうですね、ですからこうお呼びしました」
「左様か、それでじゃが」
「はい、長老は今は東京では」
「いやいや、わしは雲に乗ってな」
 そしてだというのです。
「瞬時に移動出来るからな。あと縮地法も使えるぞ」
「縮地法?何それ」
 王子は長老のその言葉を聞いて目を瞬かせて先生に尋ねました。
「先生知ってる?」
「瞬間移動のことだよ」 
 先生は王子にこう答えました。
「東洋では昔からある術の一つなんだ」
「ああ、テレポーテーションだね」
「長老はそうした術も使われるんだね」
「左様じゃ、だから今すぐにな」
 また長老の声がお話してきます。
「ではな」
「こちらに来られるんですか」
「うむ、それではな」
 こう言ってでした、、そのうえで。
 今度は長老が先生達の前に現れることになりました。先生達の京都への旅行は思わぬ展開になってきました。
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