第三幕その十
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ですから」
「とてもですね」
「はい、ですから」
それでだというのです。
「今は」
「いや、狐さんは神通力が使えたよね」
ここで狐に言ってきたのはチーチーです、チーチーが言うには。
「そうだよね」
「はい、そうです」
「それならね、神通力で安倍さんにお話してね」
「そうしてですか」
「狐の結核のお薬のことを尋ねてみたらどうかな」
そうしてみたらどうかというのです。
「ここはね」
「いえ、それは」
狐はチーチーの提案を受けてです、恐縮して答えるのでした。
「安倍様に私なぞからご連絡することは」
「それはなんだ」
「恐れ多くて」
それはです、とてもだというのです。
「あまりにも」
「それじゃあだね」
「はい、とても」
滅相もないという口調で答える狐でした。
「出来ません」
「安倍様は九尾の狐ですから」
ここでお母さん狐も言います、ここでお母さん狐は自分の尻尾を出してみせました。その尻尾の数は六本でした。
娘狐も出します、こちらは四本でした。
「とても」
「狐は尻尾の数で生きている年数と妖力がわかります」
このことは京都タワーからここに来るまでにお話した通りです、狐が。
「安倍様は千年も生きておられますので」
「とてもですか」
「恐れ多いです」
立場が違い過ぎるというのです。
「あの方は仙狐ですし」
「六百年生きている私では」
とてもだというのです、お母さん狐も言います。
「何もかもが違います」
「あれっ、この辺りイギリスと同じだね」
「そうだよね」
狐の母娘のお話を聞いてです、ホワイティとチープサイドの奥さんがお話します。
「階級があるんだ」
「そうみたいだね」
「いえ、狐の世界でも日本ではもう階級はありません」
そこははっきりと断る狐でした、そのことはというのです。
「明治維新に四民平等になってから」
「それじゃあどうして?」
「どうして違うとか言うのかな」
「明らかに身分があるよね」
「そうだよね」
「棟梁ですから」
確かにもう日本の狐の世界でも身分というものはありません、ですがそれでもです。社会的な立場というものがあるというのです。
「この辺りは日本でも同じかと」
「そうそう、日本でも社長さんとかね。そこの偉い人はいるからね」
王子は狐の言葉を聞いて言ったのでした、王子もこの辺りはわかってきています。日本の社会にも色々なものがあるのです。
「だからだね」
「そうです、言うならば安倍様は私達京都の狐の顔役でして」
そしてだというのです。
「京都の妖怪変化の中でも凄く立場のある人で知事の様な立場にも就いておられたことのある」
「狐さん達の間の長老だね」
「そうです、仙狐でもあられて」
そしてだというの
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ