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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
第二十二話「修行終了 下」
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で導かれるように腹へと吸い込まれ――。


 ――パァンッ!


 やけに高い音を響かせて先生の拳を弾いた。


 片手が空を泳いでいる。先生の表情に僅かなりとも変化が見られた。


「だぁぁぁぁぁあああああああああああっ!!」


 この一撃にすべてを賭ける。まさにそんな心境で力強く握り締めた拳を打ち下ろした。


 拳が先生の頭へと吸い込まれ――。


 ――スカッ。


 そのまま素通りした。


「ええええええええぇぇぇ!?」


 まさかの残像!?


 一瞬にして視界から消えた先生は……。


「ブルアアアアアアアァァァ!!」


 そんな雄たけびとともにとてつもない衝撃が背中に襲い掛かった。


 紙切れのように吹き飛び、地面をバウンドして茂みに飛び込んだ。


 ……いはぃ。


 懇親の一手が潰えた。もう打つ手がない。


 集中力を切らした俺の身体はもうガタガタだ。全身が悲鳴を上げてるし……。


 ガクガクと震える手足を這わせてなんとか茂みから出る。


 目の前に口から怪光線を出した先生がドアップで迫っていた。


 ――目の前が真っ暗になった。


「……ふっ」


 意識を失ったかと思ったけれど、暗くなったのは単に先生に顔を掴まれていたからだった。


 このままアイアンクローかなと半ば諦観した気持ちでいると。


「なかなかいい拳だったぞ」


「……へ?」


 顔を覆っていた手を退かされ、頭を撫でてくる。


 見上げると、目を開けた先生が俺を見下ろしていた。


 その顔はあのバーサーカーモードではなく、いつもの修行をつけてくれていたときの顔だった。


 ……え? なに?


 混乱している俺に先生がスーツの襟首を指した。


「合格だ」 


 そこにはかすかに汚れた跡があった。


 土いじりで汚れた拳が掠った形跡だった。


「あの落とし穴のトラップがなかったら今頃不合格だっただろうな。まあ、総身反射も使えたし、合格でいいだろう」


 聞けば落とし穴と落水の二重トラップでスーツが身体に張り付いたため、裏拳を放ったときに一種の制動が働いたらしい。拳の速度が一瞬落ちたため、俺でも見切れたのだそうだ。


 その代わり、スーツを一着ダメにしてしまったけれど。


「あー、俺の一張羅が……。これはダメだな」


「あの、すみません先生……」


「なに気にするな。青野の成長に一役買ってくれたんだ。スーツも本望だろうさ。まあなにはともあれ」


 ポン、と肩に手を置く先生。



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