来たる、カトレーンの女王様
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女が・・・自分の居場所まで見つけるなんてね」
人間の、フリ。
一瞬、何を言っているのか解らなかった。
それはまるで、ティアが人間じゃないみたいな――――――――。
「・・・あら、貴女“仲間”なのに何も教えてなかったの?」
「・・・」
ティアは答えない。
ただ辛そうに、悲しそうに俯いて、唇を噛みしめて拳を握りしめる。
その体は小刻みに震え、表情は帽子に隠れて見えなかった。
「まあいいわ。もうどうせここには戻って来られないんだから」
そう言うと祖母は立ち上がり、ティアを見下ろすように見つめた。
そして、手を伸ばす。
優しく差し伸べる訳ではない。
ただ、それが義務であるかのように、淡々と。
「来なさい、ティア。貴女に拒否権はないの」
拒否権はない―――――。
突きつけられた言葉に、ティアは小さく目線を逸らせた。
特別、ギルドにいるのが好きな訳ではない。ぎゃあぎゃあ騒いでいるのはうるさいと思うし、1人でいるのが好きなティアにとっては人の多いギルドは1人でいられないから不満もある。
ギルドが新しくなった事で2階にS級以外の人間も来るようになり、2階で静かに読書も不可能になった。
(だけど・・・)
ティアは思う。
確かに騒がしくてうるさくて1人でいられないけど、それでも自分はこのギルドに13年間いた。
抜ける事はいつだって出来たのに、ここにいる事を望んだ。
何でかは自分でも解らない。
だけど、ここにいるのは嫌いじゃない。
(家に戻るよりは・・・ここにいる方がいい)
カトレーンの実家。
あの場所を、ティアはよく知っている。
表向きの一族も、裏向きの一族も。
「―――――」
拒否権がない事は解っている。
それでも家に戻りたくない。
ティアがそれを告げようと口を開きかけた、瞬間―――――――
「帰らねーよ」
それを遮る声がした。
その声に引っ張られるように、ティアは声の主に目を向ける。
「・・・ナツ」
ナツは真っ直ぐな眼で祖母を見つめていた。
睨んでいた、という方が正しいかもしれない。
が、ティアはそんな事より疑問が浮かんでいた。
(私・・・家に帰りたくないなんて、一言も口に出してない・・・)
思ってはいた。
だが、声に出して言った覚えはない。
なのに、ナツは言い切った。
「ティア、嫌がってんだろ。それにティアの帰る場所はギルドだ」
ギルドの床を指さして、ナツが告げる。
他のメンバーは何も言わないが、同じ思いだった。
仲間であるティアを出来損ないだの三流だのと言った人間・・・たとえそれがティアの親族であろ
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