07:”黄昏の君主”
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き払われた。
***
「……《番外真祖》、か」
南宮那月は、焼け焦げた《人類至上主義教団》のメンバーたちを睥睨し、その名をつぶやいた。
全速力で空間転移を繰り返し、那月がここまでたどり着いたとき、すでに彼らは息絶えていた。絃神島を爆破するはずだった核爆弾すでに処理された後だった。もっとも、それは眷獣の力で跡形もなく消滅させる、という非常に荒々しい物であったが――――。
当事者が、腰を折って那月に挨拶をする。
「いつも弟がお世話になっています、南宮先生」
「全くだ。暁は手がかかる――――お前が、あいつの兄だったのだな」
那月は、《番外真祖》――――暁魔城を見つめる。
「どうやってもぐりこんだ?」
「何を言いますか。僕は普通に義父さんに拾われて、古城の兄になっただけですよ。二年間いなかった時期も、ちゃんとアルディギアにいましたしね……」
そう言って肩をすくめる魔城。
「……ではなぜ、誰もお前の存在を知らない?逆に、誰もお前の存在を疑わない?獅子王機関にも、公社にも、お前が『暁魔城』であるという情報はない。なぜだ?」
「――――知られてない、だけですよ。アルディギアで何枚か絵を描かせていただきましたが、僕は『一般には』無害な吸血鬼ですから」
「無害な、か……これだけの惨事を起こしておいて何を言う」
那月は思わず苦笑してしまう。
魔城は眷獣の能力で、《人類至上主義教団》の工作員たちを焼き払ってしまったのだ。すでに黒こげに炭化している者もいる。
「問題ないですよ。今回の一連の事件は、彼らの仕業だとは多分知られませんから」
「ほぅ……?」
何をするつもりだ、と目で問いかけてみる。すると、魔城は涼やかに、捉えようによっては冷徹に笑って、その名を呼ぶ。
「『いてつけ、《始祖の暗黒監獄》」
そして出現した《何か》に喰われるように、焼け焦げた亡骸たちは姿を消す。
「彼らには僕の《レギオン》として働いてもらいます。もう二度と悪いことはできませんよ」
「……」
魔城は、再びにっこりと笑って、言った。
「どうしたんです?南宮先生。授業に戻るのでは?」
「……いや、つくづく暁も妙な存在を呼び寄せると思ってな。――――できれば二度と会わないことを願うぞ、オーディン」
「僕はまたお会いしたいと望みますよ、”空隙の魔女”」
それは、長きにわたる安寧から、世界樹の吸血鬼が再び動き出した、その最初の出来事。
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