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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
短編外伝乱離骨灰
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市伝説があってさ」

曰く、それはピンチの人を救うために現れる。
曰く、それは顔を隠すように漆黒の兜を付けている。
曰く、それは美しい装飾の大きな西洋剣を武器にしている。
曰く、それは決して相手の血を流さないことを信条としている。

曰く、それを人々は正義の味方―――「漆黒ナイト」と呼ぶ。

「吸い込まれそうなくらいに黒い甲冑だった。とにかく俺、そのしっこくに助けられたんだ。正直噂の事は信じて無かったから、すげぇビビった。でも格好良かった」
「・・・・・・」
「あっ、クラインお前信じてないな!?マジで格好良かったんだぞ!?身長2メートルくらいあったし!!」
「あぁ・・・うん。まぁ、アレだ。何があっても俺達は友達だろ?気にすんなよ!」
「その言い方すげぇムカつく・・・ッ!!」

ずっと見とれてたけど、後からやってきた少年に呼ばれてはっとした時には、既にしっこくは居なくなっていた。お礼を言う暇も無かった。でも、それを言うと少年は大丈夫だと言った。
漆黒ナイトは自分の騎士道を通すために和人を助けたのだ。お礼を言われたくて助けたわけじゃない。感謝は気持ちだけで十分伝わる、って。

「騎士道ってスゲェ。素直にそう思ったよ。俺もああなりたいな、ともね」
「ガキの頃はみんなそうだろ。特撮ヒーローやアニメの主人公やらに憧れて育っていく。俺だってそうしてこのゲームでカタナ使いやってんだ」

でも、少年は和人よりも早くから騎士を目指していた。剣の腕前は知ってたから、自分よりよっぽど強い騎士になるだろうと子供だった和人は思ったのだ。きっと騎士を目指しても自分は少年には勝てないだろう、と。騎士は最強というイメージがあった。だから最強ではない自分は騎士になれないと本気で考えた。

「そしたらさ、アイツこう言ったんだ」

『なら、騎士じゃなくて勇者になりませんか?勇者は沢山仲間がいるから、最強じゃなくても最高の剣士になれると思います』

理屈は全く分からなかったが、最強じゃなくて最高、というフレーズが和人の心を掴んだ。漆黒の鎧に身を包んだ騎士にはなれずとも、漆黒の衣をまとった勇者ならば自分も目指すことが出来る。

「その為にあいつから剣を習った。実は俺の二刀流も元はあいつに教えてもらったものなんだ」
「マジかよッ!?」
「最近会ってないんだよな、あいつ・・・元気かな」

と、そんな他愛もない話をしていたキリトの索敵スキルが一人のプレイヤーの姿を捉えた。
小柄な体躯に黒い鎧と2本の剣を抱えた少女が歩いてきていた。

「うう・・・僕男の子なのに、何でナンパされるんだろう。やっぱり課金してアバター作り変えないとコレ続くのかな?」

・・・訂正。どうやらあれでも男らしい。かなり女顔にアバターだし、鎧のプレートが若干女性
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