第三章 始祖の祈祷書
第六話 忍び寄る影
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母后を見上げると、マリアンヌは首を振り、涙に潤む目でしっかりとアンリエッタを見つめた。
「それだけではありません。あなたの未来のためでもあるのです。アルビオンを支配する、レコン・キスタのクロムウェルは野心豊かな男と聞きます。さらに恐ろしいことに、かの者は『虚無』を操るとか」
「まさか……伝説の系統ではありませんか」
「そうです。それが真なら、恐ろしいいことですよ。アンリエッタ。過ぎたる力は人を狂わせます。不可侵条約を結んだとはいえ、そのような男が、空の上からおとなしくハルケギニアの大地を見下ろしているとは思えません。軍事強国のゲルマニアにいたほうが、あなたのためなのです」
そう言うとマリアンヌは娘の体を抱きしめた。
「……申し訳ありません母様。わがままを言いました」
「……いえ、いいのです」
広い居室の中、微かに鳴き声が聞こえる。母娘は互いに涙を流しながらも、しっかと抱きしめあった。
ところ変わってここはトリステインが誇る魔法学院の生徒が住む学生寮。その中の一室、ルイズの部屋の前でロングビルは地団駄を踏んで叫んでいた。
なぜ、ロングビルがこんなところで叫んでいるのかというと、それには深い理由があった。
ロングビルは先程やっと仕事が一段落したことから、最近タイミングが合わず、碌に会うことが出来なかった士郎に会うため、やっと出来た時間を利用し、入念にメイクをした後、うきうきと小躍りしながら士郎に会いに来たのだった。しかし、ノックするも全く反応がなく、訝しげにドアを見つめていると、通りがかった金髪ロール、モンモランシーが声をかけてきたのだ。
「あら? ミス・ロングビル。どうかしたんですか?」
「え? ええ。シロウさんに話しがあったんですが……どこにいるか知りませんか?」
ロングビルが笑いながらモンモランシーに話しかけると、モンモランシーは肩をすくめると苦笑いした。それを見たロングビルは、何故か嫌な予感を感じ、思わず後ずさってしまう。
モンモランシーは、ロングビルの様子に気づくことなく士郎の行き先を伝える。
「ミスタ・シロウでしたら、ミス・ツェルプストーに連れられて、宝探しに出かけたそうですよ」
「……え?」
「他にはルイズとミス・タバサもついていったそうですが。そう言えばルイズ達、最近授業に出てないみたいだけど、大丈夫なんですか?」
「…………」
「……? ミス・ロングビル? どうかされたんですか?」
顔を俯かせ、震えているロングビルを訝しげに思ったモンモランシーが、ロングビルの顔を覗き込もうとした瞬間、ロングビルは顔を勢い良く天井を仰ぎ見た。
「あの……」
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