第三章 始祖の祈祷書
第六話 忍び寄る影
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ませんぞっ!!」
「軍事行動の一環だよ」
どこ吹く風かというように、全く気にせず答えるクロムウェルに、ボーウッドはますます興奮した様子で訴えかける。
「トリステインとは、不可侵条約を結んだばかりではありませんかっ!! このアルビオンっ! 長い歴史の中で、他国との条約を破り捨てた歴史はないんですぞっ!!」
激高して詰め寄るボーウッドに、冷ややかな目でボーウッドを見つめていたクロムウェルは、静かな声をかけた。
「ミスタ・ボーウッド。それ以上の政治批判は許さぬ。これは議会が決定し、余が承認した事項なのだ。君は余と議会の決定に逆らうつもりかな。いつから君は政治家になった?」
軍人は政治に関与すべきではないという信条を持つボーウッドは、クロムウェルの言葉に声を詰まらせると、怒りに満ちた視線をクロムウェルに向け、頭を下げた。
「……すみませんでした。……しかし、それを行えばアルビオンは、ハルケギニア中に恥をさらすことになります。卑劣な条約破りの国として……それでもよろしいのですか」
クロムウェルは、震える声で訴えかけるボーウッドの言葉を鼻で笑った。
「フッ。それがどうしたかね?いずれハルケギニアは我々レコン・キスタの旗の下、一つにまとまるのだよ。聖地をエルフどもより取り返した暁には、そんな些細な外交上のいきさつなど、誰も気にとめまい」
あまりなその言葉に下げていた顔を上げたボーウッドは、クロムウェルに震える指を突きつけた。
「じょ、条約破りが些細な外交上のいきさつですと? あ、あなたはっ!! あなたは祖国をも裏切るつもりかっ!!!」
怒りに任せ、そのままクロムウェルに掴みかかりそうになったボーウッドだが、その前にボーウッドを制するかのように、クロムウぇルの後ろに控えていた男が、ボーウッドとクロムウェルの間に杖をスッと差し込んできた。
邪魔をされたボーウッドは、怒りにつり上がった目をその杖の持ち主に向けたが、視線の先の人物が、あまりにも予想外の人物であったことから、先程までの怒りを忘れ、呆然とした顔でその杖の持ち主を見つめた。
「で、殿下?」
杖の持ち主、それは、討ち死にしたはずの、ウェールズ皇太子であった。
「艦長、かつての上官にも、同じセリフが言えるかな?」
笑いが含んだクロムウェルの言葉に反応することなく、ボーウッドはウェールズ皇太子の前に膝をついた。それを無表情に見下ろしたウェールズは、手を差し出した。その手を恭しく受け取ったボーウッドは、その手に接吻をした。刹那その顔が青ざめた。その手は、まさに氷のように冷たかった。
それをニヤニヤと笑いながら見つめていたクロムウェルは、共の者達を促し、歩き出した。ウェールズも従順にそのあとに続く。
その
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