第三章 始祖の祈祷書
第六話 忍び寄る影
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アルビオン空軍工廠の街ロサイスは、首都ロンディニウムの郊外に位置している。そこは、革命戦争以前には王立空軍の工廠であった。そこには今、様々な建物が並んでいる。
その中の一つ、赤レンガの大きな建物。空軍の発令所の屋根には、“レコン・キスタ”の三色の旗が、誇らしげにはためいていた。
近くには、地上から仰ぎ見れば首が痛くなるほどの巨大な戦艦が停泊している。
その巨大な戦艦、アルビオン空軍本国艦隊旗艦“レキシントン”号には、巨大な雨よけのための布が、まるでテントのように戦艦の上を覆っている。そして全長二百メイルにも及ぶ巨大帆走戦艦を、今は巨大な盤木にのせ、突貫工事で改装を行なっていた。
アルビオン皇帝、オリヴァー・クロムウェルは、共の者を後ろに引き連れ、その工事を視察していた。
「なんとも大きく、頼もしい艦ではないか。このような艦を与えられると、世界を自由にできるような気持ちにならんかね? 艤装主任」
「わが身には余りある光栄ですな」
気のない声で、そう答えたのは、“レキシントン”号の艤装主任、サー・ヘンリ・ボーウッドであった。艤装主任は、艤装終了後その艦の艦長に就任する伝統が、空軍が王立であった頃からあった。そのため、革命戦争のおり、敵艦を二隻撃破した功績を認められたサー・ヘンリ・ボーウッドは、“レキシントン”号の改装艤装主任に任じられたのである。
「見たまえ。あの大砲を!」
クロムウェルは、無邪気な子供のようにはしゃぎながら、舷側に突き出た大砲を指差した。
「余の君への信頼を象徴する新兵器だっ! アルビオン中の錬金魔術師を集めて鋳造された、長砲身の大砲だぞっ! 設計士の計算ではなんとっ! ……」
調子よく大砲の自慢をしていたクロムウェルであったが、なぜか急に指差したまま黙り込んでしまった。すると、クロムウェルの背後に控えていた長髪の女性が近づくと、クロムウェルの耳元に囁いた。
「トリステインやゲルマニアの戦列艦が装備するカノン砲の射程の、おおよそ一.五倍の射程を有します」
「……なんとっ!トリステインやゲルマニアの戦列艦が装備するカノン砲の射程の、おおよそ一.五倍の射程を有するのだっ!!」
「「「「おお〜」」」」
長髪の女性が教えたのが明らかであったが、クロムウェルの取り巻きは、感心したように感嘆の声を漏らした。
その光景を冷ややかな目で見たボーウッドは、軽くため息を吐くと、クロムウェルに囁いた女性に視線を移動させた。その視線に気が付いたクロムウェルは、ボーウッドに女性を紹介した。
「ふむ、ミスタ・ボーウッドには、大砲よりもこちらの女性が気になるようですね。こちらの美しい女性はミス・シェフィールドというのですよ」
クロムウェルに紹介されたシェフィールドと呼ばれた女性
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